No.1648 孤独な人を救う方法


この間、ふと思い出した話。

中学1年生の時、入学してわりと間もない頃に
林間学校(?名称は忘れた)のようなものがあった。

要は、クラスとしての一体感を作るための
お泊まり合宿みたいなものだったと思う。
行き先は、兵庫県にある学校の課外学習では
定番中の定番、「ハチ高原」だった。

小学校を卒業し、中学校という
「弱肉強食」の世界に放り込まれた当時の僕らは、
なにせ色んなことにツッぱっていて、
こんなお泊まりイベントには当然「くだらねぇ」という顔をしていた。
本当は、小学校の修学旅行以来の外泊にドキドキしていたんだけど、
まぁ、そういう年頃だったわけだ。

ハチ高原の宿につくと、出席番号の並びで決めた
いくつかのグループで行動をさせられた。

僕の名前は「は」から始まるので、
同じグループになったのは「の」「ひ」「ふ」から始まる名字の奴ばかり。
ちなみに1つ前の別グループには「な」から始まる名字の奴が多くて、
その中に、中原(愛称:シゲ)という奴がいた。

背が高くて、おとなしめの性格だったんだけど、
普段はボソッという一言がなかなか面白くて仲も良かったんだ。


合宿当日、バスに乗ってハチ高原についてグループ行動が始まり、
数時間が経過した頃だったと思う。

1つ前のグループの奴が、
僕らのグループにこんな話を伝えにきた。


  「なぁ、シゲが一人で泣いてるねんけど」


驚いて部屋に行ってみると、
聞いたとおり、シゲが隅っこで膝を抱えて泣いていた。


 「…シゲ、どうしてん?」


      「…」


何も答えず、ただ黙って下を向くシゲ。
そのうち、仲の良かった男連中が集まってきて、
みんなで心配になり理由を聞いた。


  「なぁ、元気だしーや」


誰かがそういって背中を叩こうとした瞬間だったと思う。
突然、シゲが部屋で暴れ始めた。


      「もぅ! 放っておいてよ!!」


いつも控えめだったシゲの行動に驚いた僕たちは、
あっという間に部屋から閉め出され、
それからまたしばらくシゲは一人で部屋に閉じこもった。


中学という違った環境、
宿泊という特別な条件、おとなしめの性格、
シゲの心が乱れたのにはいろんな要因があったんだろう。

ただ、あの時学んだことは、
「孤独でいる人を孤独にしちゃだめだ」ということだ。

「孤独にしちゃだめ」というのは、
僕らがあの時やったように
「みんなで心配して励ますこと」ではない。

むしろ、その逆。

みんなで心配しにいくと、
意図せずとも「一人 対 大勢」の図式が生まれてしまうから、
孤独感はさらに増してしまう。
だから、僕たちのやったことは間違いだった。

孤独を感じているからこそ、
大勢ではなく、一人で話を聞きにいかなければいけない。

結局、あの時それを理解して実行していたのは、
担任の先生だけだった。
翌日、シゲはグループの中で笑っていた。


人間の気持ちって、難しい。
でも、奥深いからこそ面白い。

あの時シゲが見せた怒りと笑み、
今でも心に残っている。