No.2102 都会流のやさしさ

深夜の繁華街。

終電を急ぐ人たちでごったがえす道の脇に、
一人の若い女性が落ちていた。

「落ちていた」など、
人に使う言葉ではないことはわかっている。
でも、彼女の姿はそう見えた。

うずくまっているけれど
体調が悪い様子もなく、
ただ遠くを見つめて、佇んで。

生命のオーラが
空に消えてしまったかのように。

何があったのかはわからないけれど、
都会の夜、
行き交う人々はもちろん、タクシーでさえ、
誰も彼女を拾おうとはしなかった。

彼女は何を待っていたのだろう。
恋人か、車か、
それとも夜明けの光か。

彼女は道に落ちていた。

都会流のやさしさか、
人波は彼女の孤独を応援するかのように、
数メートルの聖域を作っていた。