No.2114 佐賀の鈍行列車の中で教えられたこと

昨日。
 
佐賀から鳥栖へ、
窓の外に田園風景が流れる
鈍行列車に乗っていた時のこと。
 
ワンマン2両編成の車両の中は、
スーツ姿の僕が浮いてしまうくらい穏やかな雰囲気で、
数人のお年寄りと、
学校帰りの中高生ぐらいしかいなかった。
 
学生はみんな
田舎っぽいやさしい顔立ち。
 
その中で一人だけ、
ちょっと都会っぽい髪型でヘッドフォンをして、
尖った感じの男の子が
ドアの近くに立っていてね。
 
悲しげだけど芯の強そうなその目が
なんだか印象的だったんだ。
 
うたた寝を誘うようなスピードで
電車はゆっくりと進んではまた止まり、
途中の駅でしばらく
特急列車の通過待ちをしていた時。
 
通過した列車が巻き起こした風のせいで、
女子中学生たちの座席から
コンビニのビニール袋が床に舞い落ちた。
 
おしゃべりに夢中で
それに気付かぬ女子中学生たち。目を閉じて居眠りをしているお年寄り。
 
誰にも気付かれることなく、
糸の切れた凧のように
ビニール袋は車両の中をさまよい続けていた。
 
と、その時。
 
さっきの尖った感じの男の子が
突然車両の中をスタスタと歩きだしかと思うと、
黙ってビニールを拾いあげて
車両の端にあるゴミ箱に捨てた。
 
うまく言えないけど、
そのさりげない感じがカッコ良くてね〜。
 
大阪の車両で同じようにビニール袋が待っていたら、
面倒くさがって誰も拾わないんじゃないだろうか。
 
ましてや、彼のような若い男の子なら
ヘッドフォンをして無視だろう。
 
彼のしたことは、
人として当たり前のことかもしれない。
 
でも、その当たり前を
迷わず堂々とできる彼は
やっぱりカッコ良かったよ。
 
都会の地下鉄のように乗客は多くないけど、
佐賀の鈍行列車は
たしかに人間を乗せて走っていた。
 
列車って本当は、
車両の外の景色じゃなく
車両の中を楽しむもんなんだな。
勉強になったよ。ありがとう。