No.2123&2124 エイプリルフール大作戦(16連勝をかけて)


●今日のおはなし No.2123●

今日は4月1日。
そう、待ちに待った「エイプリルフール」だ。

もう説明するまでもないだろうけど、
今日は僕にとって年に1度の大勝負の日でもある。
もはや、「この日のために生きている」と言っても
過言ではないだろう。

大学時代からの友人O君に
毎年サプライズを与え続けて15年。
前人未踏のエイプリルフール16連勝のかかった今年の作戦は、
数日前から静かに進行されていた。

ここからお話しするのは、
緊迫しつつもやっぱり笑えるドキュメントである。


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絶対に負けられない戦いが、ここにはある。

3月29日、月曜日。
朝の通勤電車の中で、僕は
数日後に迫った大イベントの企画に頭を悩ませていた。

なにせ、これだけ長いこと騙し続けていると、
既にあらゆる手段をやり尽くしてしまっている。
新たなアイデアを考えるのは至難の業だ。

サプライズは仕込みが肝心。
そして、その仕込みは数日前からやるのが鉄則である。



 「今日中に何らかの布石は
  置いておかなくてはいけない。
  でも…、どうする? 何がある??」



ただでさえ警戒されているので、
あまり無茶な嘘ならすぐにバレる。

本当にありそうで、でもちょっと非日常な
ギリギリのラインとはどこか…。

しばらく葛藤を続けた末、
電車が上新庄を過ぎたあたりでアイデアの神様が降りてきた。



 「あー、そっか。
  よし! これで行こう!」



布石は時間が勝負。
早速僕は友人Oにメールを送信した。こんな内容で。



> 取材でペルーに行くことになったわ。



少し無茶だなぁと思いつつも、
「日本にいながらどこまで相手を騙し続けることができるのか」、
今年はこれに挑戦することにした。

先日、彼がペルーに出張に行ったという情報は聞いていたから、
ペルーという名を聞いただけで食いついてくる可能性も高いし、
何よりも、
「Hは国外へ行って今年はエイプリルフールどころではない」
という感じを演出することで警戒心を解く…という狙いもあった。

ただし、それは諸刃の剣でもあって、
ペルー経験者の彼に嘘がばれないようにするには
例年以上に言葉に信憑性が求められる。
相手の知識に負けるわけにはいかない。



 「まぁ、ペルーの記事を書いたこともあるし、
  なんとかごまかせるだろう」



とりあえず楽観的に考えて、
迎えた翌日の3月30日。

彼がおはなし会員であることも計算に入れて、
昼に配信した「今日のおはなし」でも
あえてペルーやマチュピチュ遺跡の話題を取り上げ、
いかにもテンションが上がっている様子をじんわりとアピール。

そして夜、第2便のメールを送った。



> すまんが、知ってたらでいいので教えて。
> リマからクスコという街まで行きたいねんけど、
> 向こうの国内線って結構便数はあるの?
> もしくはレンタカー店のようなものはあるんかいな?
> 調べてるけどさっぱりわからん…。



軽く知っているけどよく知らない。
このギリギリのラインを演出するのは本当に難しい。

そして数分後、ようやく彼から最初の返信が。
疑われていないか、僕はドキドキしながら本文を確認した。



>> 毎日、朝一出発の飛行機があるけど。



よーっし!! かかった!!

思わずガッツポーズをしたけれど、喜ぶのはまだ早い。
勝負はまだ序盤。
シナリオ上では、
これから僕はペルーに行かなければならないのだ。

すぐさま、こう返信。



> さんきゅー。できれば車を借りたいけど自分で探してみるわ。
> 完全なる予算消化出張やけど、パスポート更新しといて良かった。
> お客さんが手配してるからイマイチよく分からんけど、
> 明日から成田〜ロス経由で行ってくる。



ペルーに直行便がないことぐらいは、
ちゃんと知っていた。
この程度具体的な知識を出しておけば、
彼も疑いはしないだろう。

そう一瞬油断した瞬間だった。
彼から思わぬ内容の返信がやって来たのは。



>> ホテルはどこ?



えっ!? ホテル…??

行ったことも、行く予定もない街のことなど
分かるはずがない。
しかし、出発を前日に控えて
ホテルを予約していないケースなどはあり得ない…。

彼の質問はいたって普通なのだが、
「なんであえてそんなこと聞くねん!」とちょっとイラついた。



 「どうしよう、
  ここで即答しなければ明らかにバレる…。
  やっぱり、この先僕一人で戦うのは無理だ。
  仕方ない、“アイツ”に助けを求めよう」



そして、数分後。

意を決して応援を要請したら、
突然の依頼にもかかわらず、
そいつは何も言わず快く引き受けてくれた。

情報戦を行う上では最強とも言える
寡黙かつ聡明なパートナー、
彼の名は「Google」君といった。

            (明日につづく)

 

●今日のおはなし No.2124●



(昨日のつづき)



>> ホテルはどこ?



という友人Oの質問に即答するため、
強力なアドバイザーである「Google」君に情報を求めた。
すると「Google」君は、
わずか0.1秒で僕に候補案を複数提示してくれた。

もちろん、彼はあくまでアドバイザー。
候補は挙げてくれるが、答えは僕が決めなければならない。



 「えーっと、シェラトンホテルがあるのか。
  でも、そんなメジャーなホテルを答えたら
  テキトーに言ってるみたいだしな。
  もっと信憑性のある、
  いかにもペルーっぽい名前のホテルは…」



しばらくホテル一覧を見ながら迷ってから、
僕は彼にこう返信した。



> ラス・アメリカスホテルってところ。



ペルーの首都リマ市内で、そこそこビジネス向けで、
日本人が泊まりそうで、名前がそれっぽいところ。
我ながらいいラインの選択だと思った。

さて、バレずにこのピンチを切り抜けられるのか…。



その夜は特に返信がなく、
ドキドキが続いたまま迎えた、3月31日。
正午頃に彼から返信があった。



>> そのホテルは知らない。ごめんね。カジノぐらいかな。



なるほど、彼がホテルの場所を聞いてきたのは、
おすすめスポットを教えるためだったのか。
なかなかいい奴だと思いつつも、
僕はまだまだ作戦を進めなくてはならない。

Google君の情報によると、
日本からペルーまでは飛行機で24時間前後。
計算では、そろそろ僕は
成田空港から飛行機に乗る時間だった。



> さんきゅー。今成田で待ちやわ。いってきます



こうメールに書いて、
デルタ航空の飛行機が
成田で待機している写真を添付して送信。
写真はもちろん、
Google君の画像検索から提供してもらったものだ。

13:00頃に「おはなしおやすむ(パスポートネタ)」を送って、
いかにも出国する雰囲気を演出し、
僕は昼過ぎに日本を出国した、ことになった。


その夜、彼からこんなメールが。



>> 車はリスク大きいので飛行機がいいよ。
>> リマなら海外設定にしてたら日本の携帯はつながるわ。気をつけて



おお、情報提供ありがとう。
と思いつつも、返信するわけにはいかない。

なにせ僕はデルタ航空でロスを経由しながら
ペルーに向かっていることになっているのだから。

翌日に迫ったネタ晴らしの瞬間を楽しみにしつつ、
Google君の画像検索で
リマ市内の写真を探して準備を整えた。



そして、4月1日。

約24時間のフライトを終えた感じで、
正午頃彼にメールを送信した。



> 遠い、遠すぎるぜ! そして携帯がつながることが奇跡やな〜。
> 街のどこで飲めるかわからんから教えてや。また後で電話する。



時差を考えるとペルーは夜なので、
リマ市内の有名建物(夜バージョン)の写真を添付。
あたかもペルー到着にテンションが上がっている感じを演出してから、
数時間後、彼に電話をした。



 「もしもし、いやー、携帯つながるねんなー。
  しかし、遠かった。眠たい。こっちは早朝やで」



   「あ、そうか。お疲れやな。それにしても急な出張やな」



 「話があったのは先週やねんけどな。
  で、リマってどこで飲めるんよ?」



   「えーっとなぁ、」



ネタ晴らしを後にして、
しばらく設定上の国際電話を楽しんだ。



 「よっしゃ、わかった。そしたら今から一緒に飲もか。」



   「いやいや、そっちはペルーやん。今どこらへんにおるん?」



 「大阪城あたりかな」



   「へ?」



 「北新地で飲む? すぐ行けるで」



   「…、!
    あぁ〜くそ! やっぱり!
    そーかなと思ってんな!」



 「今年も楽しませてもらったわー」



こうして、絶対に負けられない僕の戦いは
みごと連勝記録更新という形で幕を閉じた。

人生を楽しむには、やっぱりサプライズが必要。
16年間騙され続けてくれた功績をたたえて、
彼にはドッキリ界のアカデミー主演男優賞をあげたい。
(Google君にも助演男優賞を)

今回の作戦を通じて、
ある意味でペルーを勉強することができた。
シナリオじゃなく、いつか実際にリマに行ってみたいなぁ。