No.2221 沖縄は誰のもの?

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 「先生、最近中国がなんだかムカツクね!」


   「うーん、そうだね。
    あまり大人な対応とは言えないね。
    でもね、僕たち日本人ももう少し
    勉強しなきゃいけない部分もあるかもしれないね」


 「どういうこと? だって、尖閣諸島は沖縄で、
  沖縄は日本のものでしょ? 池上先生もテレビで言ってたよ」


   「たしかに、今はそうなっているし、
    中国も日本の領土だと認めていた証拠文書もある。
    でも、権利と歴史の話は別なんだ。
    文句を言う前に、僕たちも歴史を理解しておく必要があるだろう?」


 「歴史かぁ、
  沖縄って昔は琉球王国だったんだよね?」


   「そのとおり。
    その琉球王国という名前は、誰がつけたか知ってるかい?」


 「えーっと、昔の幕府かな?」


   「いや、違う。中国(明朝)だよ。
    簡単にいうと、当時の明から『属国にならない?』と誘われて、
    それを受け入れる形で琉球王国が誕生したんだ」


 「えーっ!? そうなの? 元々日本じゃなかったんだ」
   

   「誰のものでもなかったところを、
    まずは明が属国にしたんだね。
    琉球王国は立地上、明の貿易中継拠点として重宝されたから、
    当時は今の沖縄を『大琉球』、台湾を『小琉球』と呼んでいたらしい。
    大の方が小より偉い、ってことだけどね」


 「ふーん。でも、属国だったら
  明の厳しい支配下に置かれて
  琉球王国の人は困っていたんじゃないの?」


   「ところがそうでもなかったんだ。
    属国と言っても、貿易だけきちんと協力していれば
    いたって平和的な支配だったからね。
    ただ、その利権を武力で狙っている存在がいた」


 「え? 台湾?」


   「違う。日本さ。
    ある時、薩摩藩の島津氏が
    利益目当てに琉球王国に侵攻してきて、
    琉球王国は日本の支配下に置かれることになったんだ」


 「そうなの!? 琉球王国はなくなったの?」


   「いや、その時点で滅ぼしはしなかった。
    滅ぼすと、明との貿易関係がなくなるからね。
    具体的には、沖縄本島より上は薩摩藩の領土として、
    それより下は、琉球王国のままにして貿易を続けさせた。
    薩摩藩は琉球王国の貿易利益をピンはねするという形で、
    軍事資金を増やしていったんだ」


 「うーん、それだけ聞くとヤクザみたいだね」


   「琉球王国を残した理由はもう1つある。
    鎖国状態だった当時の日本にとって、
    海外とやりとりをする琉球王国を
    自国と認めるわけにはいかなかったからね。
    でも、その状態も長くは続かなかった」


 「え? 何が起きたの?」


   「廃藩置県って、授業で習ったことあるでしょ?
    1879年、日本は琉球王国を廃止し、『沖縄県』にしたんだ。
    つまり、名実共に“日本の領土”だとしたわけだね」


 「その時、中国は怒らなかったの?」


   「そりゃ怒ったさ。当時の中国は清朝だったけど、
    清は日本に抗議をした。
    でも、日清戦争で日本に負けてね。
    そこからずっと、日本の領土のままなんだ」


 「そうなんだ。
  明と清の500年ほどの間は中国のものだったのに、
  日本が横取りしたんだね。
  じゃあ、沖縄は中国のものなんじゃないの?」


   「そうとも言えるし、そうとも言えないところあるね」


 「どういうこと?」


   「『中国が先に琉球王国を属国にした』というだけのことで、
    『元々中国のものだった』というのとは違うからね。
    また、近代で言えば、池上先生の言ってたとおり、
    中国は日本の領土でいいと認めてきた。
    石油資源があることが分かった途端、
    急に『自分たちのものだ!』と言い出しているけど、
    向こうからも歴史に基づいた主張は何もされていないでしょ」


 「たしかに、そうだね」


   「でも、それは日本も同じなんだ。
    大半の人が沖縄の歴史を知らず、マスコミに煽られて
    『日本のものだったから中国が悪い』とだけ言っている。
    それはそれで間違いだと思うんだ。
    お互い、自国の権利と利益だけを主張しているけど、
    そこに沖縄の歴史はあまり出てきてないでしょ?」


 「そうだね。沖縄が一番かわいそうだね」


   「海というのはきれいな存在だけど、
    時として海は、陸と陸とを分ける壁となる。
    たとえば、一つの陸に水が流れ、
    『陸・海・陸・海・陸』という状態になったら、
    真ん中の陸は『島』となるわけだ。
    そして、島は両方の陸からラブコールを受けることになる」


 「日本は特に島が多いよね」


   「そう。その中でも、島のみで構成される沖縄は、
    ずっと日本と中国の間で揺られ続け、
    時には日本とアメリカの間で売買をされてきた。
    現地の人の気持ちがわかるだろ?」


 「うん、歴史を勉強したらわかってきたよ」


   「今、日本と中国がもめているけど、
    先生は『どちらのもの』という議論自体が
    おかしいと思っているんだ。
    現地の人がどうしたいか、それが唯一の答えだろうと」


 「うん、うん」


   「沖縄は、王国をつぶされたり、アメリカに売られたり、
    何度も日本に裏切られてきたから、
    沖縄の人が『明日から中国に入ります!』と言い出せば、
    日本政府に止める権利はないと思う。逆も同じだけどね」


 「日本も中国も、対応策とか報復だとかばかり言ってないで、
  もっと大人な議論が必要だってことだね」


   「うん、そうだね。
    極論を言えば、土地は誰のものでもない。
    そこで暮らす人の気持ちも、他人には所有できないものなんだ。
    元々そこで生活していた人の意見を尊重して、その上で
    日本と中国が仲良くやれる道を模索できればいいね。平和にね」