No.2348 蝶の命と、男の子の涙

4歳ぐらいだろうか。
公園で、水鉄砲を持った男の子が遊んでいた。

ぴゅー、ぴゅーと
何かを追いかけながら水を撃っていて、
その先を見ると、白い蝶が飛んでいた。

「待てぇ〜」と楽しそうに追いかける男の子。
撃たれてなるものかと、ひらひら飛び回る蝶。

次の瞬間、
たまたま水鉄砲の水が羽に当たったのか、
蝶がはらりと地面に落下した。

ベランダで眺めていた僕は、
「おぉ、命中したな。最近の水鉄砲は威力あるなぁ」と思いながら
男の子がさぞかし喜ぶ顔を想像していたんだけど、
蝶が落ちた後、彼はその場で固まってしまって。

おそるおそる歩み寄り、
蝶が動かなくなったことを確認した瞬間、
大きな声で泣き始めた。

涙に言葉は無かったけれど、
男の子が泣いた理由はわかった。

ねぇ、男の子。
君は悪いことをしたのかもしれないけど、
それに気づいたことは偉いことなんだよ。

大人だって、目で見て初めて
自分のあやまちに気づくことだってあるさ。

蝶の命が戻らないように、
世の中にはやり直しがきかないことだってある。

それを知ったなら、明日から違う自分になればいい。
優しさは、何度でもやり直せるから。

男の子は、音の子。
耳を澄まして、何かを感じ、学びながら、
優しくたくましく生きるんだ。