No.62&63 神の島

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●今日のおはなし No.62●

 

大学2年の頃ゼミの社会調査実習で、
沖縄本島から船で30分、
「神の島」という異名を持つ伝説の島
久高島という所に行った。


一言で言うと、そこは神秘的。
日本であって日本じゃ無かった。

その島には、祭祀組織が存在していて
神と交信する人が一人いる。

年に一回、
成人に達した島の女性すべてが
その人を囲んで神への儀式を行っている。

神と交信する人は、
年中小屋のような所で神と対話を繰り返している。
その周り半径20mくらいはいわゆる「聖域」で
一般の人が足を踏み入れてはならない。

その島では、すべての事に対して誰も疑問を抱かない。
誰も島の風習を疑わない。

客観的な目がないわけでは無い。
最近の日本の時代の流れは知っていたし、
ファミコンだってあったと思う。

ただ、子供はみんな海で遊んでた。
男は海へびをとって、声を嗄らしていた。
女は島を守って、日が沈むと夕食の準備を始めていた。

なんだろう。あの時感じた気持ちは。
ぼんやりと無数の流れ星を仰ぎながら
あの時初めて、生きるという事を考えていた。

 

 

●今日のおはなし No.63●

 

(ちょいと昨日の話のつづき。)


ニライ荘のおばさんが言った。



 「今日はいい風が吹いとるね。40度くらいかね−」



島の気候は湿度も高く、ハンパじゃなく暑かった。
おばさんと会うおよそ3時間前。
僕は偶然一人で神の島に来ていた女の人と出会った。

島の話で盛り上がって
一緒に二人で島を探検した後、暑くなってきたので
僕とその女性は、
宿を提供してくれてるおばさんの家の縁側で
麦茶を頂きながら島でずっと生きてきたおばさんの話を聞いていた。

おばさんは言った。



 「みんな、一度はこの島に憧れてここに来なさる。
  でも、みんなすぐにどっかに行ってしまう。」



島にはよく、海外からもお嫁さんが来るらしい。
先日アメリカから来たお嫁さんは、
生まれた子供を残してこの島を去っていた。

神の島には時間がない。
太陽が沈んだら寝て、太陽が出てきたら起きるだけ。
僕達の言葉で言うと、単調な毎日。

もちろん、多くの人が去ってしまうのは
単調だけが原因じゃない。
昔の人と人との深いつながりが今も残る
この島の環境は、新しく来た人には馴染みにくい。

何故か理由は忘れてしまったが、
知らないうちに、おばさんは泣いていた。
さっき会ったばかりの女性も、一緒に泣いていた。

僕は泣かなかったが、
なるべく二人を見ないように
照りつける太陽を見上げていた。

自分の生きてきた人生が、浅いものに感じた。
暑い暑い、夏の日の事だった。