No.2592 東京タワーの支柱に野球ボールを隠した人

真夏のミステリーか!?
 
東京タワーの支柱の中に
軟式野球ボールが入っていたらしい。
 
一体誰が、いつ、どうやって…?
謎は深まるばかりだ。
 
建設後に入れることは不可能だから
建設中に入ったとしか思えない。
 
sunny-yellow新聞社では
独自のルートで情報を集め、
遂に、軟式ボールを入れた張本人への
単独取材に成功した。
 
 
「あなたがボールを入れたんですか?」
 
 
   「ええ、バレましたか」
 
 
「いつ入れたんですか?」
 
 
   「東京タワーの工事が終わりに
    さしかかった頃ですから、
    昭和33年ぐらいでしょうか」
 
 
「なぜ軟式ボールを?」
 
 
   「いつか、東京タワーが解体される日が来たら
    みんなをビックリさせたいなと思って」
 
 
「いや、たしかにビックリしました。
 でも、タイムカプセル的にやるなら
 他のモノでも良かったはずです。
 なぜ、野球のボールだったんですか?」
 
 
   「たしか、280mぐらいまで
    工事が進んだ時だったと思います。
    『ここまで来たらあとは楽勝だな』って誰かが言って。
    ちょっと、工事をサボっていたんですよ」
 
 
「ええ、それで?」
 
 
   「で、なぜかその場のノリで、
    『思い出作りのために、
    この高所でキャッチボールやろうぜ』という
    話になったんです。
    命綱をつけながらのキャッチボールは、
    それはそれはスリルがあって楽しいものでした」
 
 
「…、よく怒られませんでしたね」
 
 
   「いや、怒られたんですよ。
    遊んでいるのを現場監督に見つかって、
    『おめーら、何やってんだ!!』と。
    その時とっさにボールを隠したんですよ。支柱の中に。
    その後はすぐに作業に戻ったので忘れていましたが、
    数年経ってから『しまった!ボールを忘れてきた!』
    と気づいたんです」
 
 
「気づいた時には、既に遅かった、と」
 
 
   「ええ、東京タワーは完成して、
    多くのお客さんも訪れていましたからね。
    ボールのことは、仲間と約束して
    墓場まで持って行くつもりでした」
 
 
「なるほど。
 今回ボールが発見された時、
 どのように感じられましたか?」
 
 
   「驚きましたが、懐かしかったですね。
    当時流した汗が、よみがえってくる感じがしました。
    私も70歳を過ぎ、今は日雇いで現場作業をしていますが、
    もう一度頑張ろうかなと思いましたよ」
 
 
「東京タワー建設の経験を買われて、
 スカイツリーの建設工事にも参加されていたとか?」
 
 
   「ええ、600mからのフィニッシュ工事を
    担当させていただきました。
    遺言がわりにお話ししておきますが、
    スカイツリーには『サッカーボール』を隠しておきました」
 
 
「サッカーボール!?」
 
 
   「まだみんなには内緒ですよ。
    50年後、未来の人々が驚く顔が楽しみです」
 
 
 
sunny-yellow新聞社は
この事実をスクープにはせず、
50年間温めて
「未来へのサプライズプレゼント」にする予定だ。