No.2605 娘のアルバム


娘がいると、
よくこんな光景を想像して泣いてしまう。
世間のお父さん、共感プリーズ。


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  「私のアルバム」

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 私が成人式を迎える前の日。
 なんとなく懐かしいアルバムを
 めくってみたくなった。

 生まれてから20年、
 どうやって私が育ってきのか、
 そのレシピを確認したくなって。

 居間にある押し入れを久しぶりに開けると、
 もう使わなくなったガラクタたちの向こうに
 埃をかぶった古いアルバムが並んでいた。

 10冊、いや、20冊はあっただろうか。
 一番端にあったアルバムを手に取って開いてみると、
 2〜3歳の頃の幼い私が写っていた。



   「かわいい〜。
    私、こんなに無邪気に
    笑える子だったんだ」



 1冊、2冊、
 時間が経つのも忘れて
 次々とアルバムをめくった。

 家の前でお兄ちゃんとピースをしている写真、
 うれしそうに滑り台を滑っている写真、
 夢中でリンゴをほおばっている写真 …etc.

 1枚1枚、
 頭の中に残っているようで消えていた
 幼い日の記憶を辿っていくうちに、
 少しずつ、私という人間の原点が見えてきたような気がした。



   「そっか、私には、
    今の私になった歴史があったんだ」



 7冊目のアルバムを開いた時、
 近所の公園で撮ったらしき1枚の写真に
 お父さんが写っていた。

 気づけば、
 お父さんの姿が写っている写真は
 7冊目にして初めてだった。



   「な〜んだ、
    お父さん、私たちを撮ってばかりで
    自分は全然写ってないやん」



 その時、私はふと気づいた。

 たくさんのアルバムの中にある無数の写真は、
 すべてお父さんが撮影したもので、
 つまり、それらのシーンはすべて
 お父さんがカメラのファインダーから覗いていた光景であることを。

 アルバムをもう一度見返すと、
 私の写真は、どの場所で撮った写真も笑顔が多かった。



   「お父さん…、
    こんな一瞬の表情まで逃さずに撮影してる。
    きっと、ずっと私を
    カメラで追いかけていたんだろうな…」



 もう一度、1枚、1枚、
 最初から写真を見返してみた。

 自分の姿ではなく、今度は
 カメラで撮影していたお父さんの表情を想像しながら。
 想像の中でのお父さんは、いつも私を見て笑っていた。
 



 気がつけば3時間ほど経っていただろうか。
 すべてのアルバムを見終えた私の中に、
 今までになかった言葉が浮かんでいた。
 
 ちょっと照れくさかったけど、
 押し入れを静かに閉めた後、
 その言葉を大切に胸に抱えながら
 お父さんがいるリビングへと足を進めた。
 
 

   「ねぇお父さん、」



      「ん? どうした?」



   「明日成人式が終わったら、
    私と二人で写真撮ってくれない?」
 



 翌日。

 振袖に身を包んだ私は、
 お兄ちゃんにお願いして
 お父さんと二人で写真を撮ってもらった。

 二人の顔は、笑っていた。

 カメラを構えたお兄ちゃんもニヤニヤしていて、
 傍で見ていたお母さんも、ずっと優しく微笑んでいた。