No.2639&2649 フライトの最中に僕を襲った激痛

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●今日のおはなし No.2639●

この間、鹿児島から東京に飛んだ時のこと。

羽田行きの飛行機が出発する30分前にバスが到着し、
手荷物を預けようとしたら、
異常なほど長蛇の列ができていた。
どうやら、修学旅行生の団体がいたようで…。

迫り来る出発の時間と反比例するように、
ダラダラと進む高校生。

心の中で
「お〜い! おっちゃん達急いでるねん!」
「お前ら若いんやから、泳いで帰れ!」と叫んだけど、
要領を得ずに、何度も手荷物検査で引っ掛かる高校生たち。
結局、僕が手荷物を預けられたのは10分前だった。

幸い、なんとかギリギリ飛行機には乗れたけど、
あのまま時間切れになっていたら…、
たぶん僕は泣きながら暴れていただろう。

初めて乗る羽田行きの飛行機は、
意外と快適だった。
何より、西日本の地方路線とは違って
飛行機がでかい。

いつもは右2・左2の小さなボンバル機に乗っているけど、
久しぶりに3-5-3のジャンボに乗り、
ちょっとテンションが上がった。

しかもだ。
東京へ向かう飛行機は、
大阪行きのそれとは違って客層のマナーが良い。

私語も少ないし、スポーツ新聞を広げて
「阪神どないなっとるねん!」と怒ってるおじさんもいないし、
通路側の僕の前を横切る時は、どんな年配のおっちゃんでも
「申し訳ありません。大変失礼します」と頭を下げてくる。

日本もまだまだ捨てたもんじゃないなと思った。

ただ、心地良い時間はそれほど長く続かなかった。

羽田空港到着に向けて
飛行機が高度を下げていった瞬間、
今まで感じたことのないような激しい頭痛が…。

「アカン、頭が割れる…。
でも、ここで割れてはいけない。
割れるならせめて、
トイレに行って脳みそを出さなければ…」

そんなことを考えながら
立ち上がろうとしたけれど、
痛くてまったく動けない。

その時ふと、手元に
CAさんを呼ぶボタンが見えた。

「こっ…、このボタンを押したら、
美人のCAさんが介抱してくれるんだろうか?
そ、それはそれでイイじゃないか♪
そう、そうしたサービスも込みの運賃なんだ。
…遠慮するな、俺」

そして、
禁断のボタンに手を伸ばそうとした瞬間、
突然隣から声がした。

「すみません、大丈夫ですか?」

声の主は、
さっき僕の前を頭を下げて横切った
紳士的なおじさんだった。
「いや、CA呼ぶねん!
オマエちゃうねーん!」とはさすがに言えない。

「あ、ええ…、大丈夫です」

「大丈夫」と言ってしまった手前、
そこから騒ぐわけにも行かず、
結局、CAさんに介抱される絶好の機会を逸してしまった。

無事羽田空港に着いた後、
モノレールに乗っていたら
「ちくしょう!」と独り言を言っている若者がいた。

ちくしょう、か…。
関西人の自分は使ったことがなかった言葉だけど、
その時は関東弁で叫んでみたくなった。

「ちくしょう!
CAの腕の中で眠りたかったぜ!」

ホテルに着くまでの間に、
頭痛はいつのまにか治っていた。

まったくの八つ当たりだけど、
東京は冷たい街だと思った。

 

●今日のおはなし No.2649●

昨日の朝、大阪伊丹空港。

未明に降った豪雨もやんで、
空は曇り空だった。

濡れている滑走路を歩きながら、
いつもどおりの狭いボンバルディア機に乗り込む。
台風も来ていないし、飛行機トラブルもない。

「初めてだな。九州出張でこんなに順調なのは」

前日から少し不気味な予感があったけど、
今回の出張はうまく行きそうな気がした。

無事飛行機が離陸し、
香川上空までは快適なフライトだった。
が、熊本空港に向けて機体が高度を下げ始めた瞬間、
突然悪夢が始まった。

「…くっ、い…、痛っ…」

左のこめかみを襲った急激な痛み。
この間、羽田に移動中に感じた痛みよりも大きな
“激痛”レベルのもので、
頭を殴られたような痛みがずっと続き、
左の眼球の奥がちぎれそうに。
本気で「死ぬかも…」と思ったのは久しぶりだった。

しばらくして、
ようやく飛行機が熊本空港に着陸。

気圧のせいか、少しだけ頭痛は和らいだけど、
180%の激痛が120%の痛みになった程度で
まだこめかみがズキズキ音を鳴らしていた。
左目からは、ずっと涙が出て止まらなかった。

とはいえ、目先の仕事もある。

空港まで迎えに来てくれていた
現地の方の車に乗り込んでからは、
助手席で左目から流れ続ける涙を
極力見せないようにして阿蘇へ向かった。

阿蘇に到着し、
なんとか痛みをごまかして取材を済ませたものの、
精神的には「は…、早く帰りたい…」と疲労困憊の状態だった。
ところが、そんな時に限って悪夢は続く。

「せっかく阿蘇まで来たんだから、
火口付近まで連れていってあげましょう♪」

現地の人が放った気遣いのひと言は、
その時の僕にとって死刑宣告のように聞こえた。
ただ、サラリーマンとして
せっかくのご厚意を断るわけにもいかない。

「あ…、ありがとうございます(涙)
じゃ、お願いします。ハハハ…」

そこから火口まで約30分、
徐々に高度を上げながら走るドライブは
まさに死のドライブだった。

気圧が変わるたびに痛みが激しくなり、
涙の量が増えていく。

「頂上って…
どのくらいの高さがあるんですか?」

「1592mですよ。
“ひごの国”で覚えてくださいね」

阿蘇山という山は今はないことや、
大昔にあった1万m級の山が爆発して
外輪だけ残ったのが今の阿蘇だということなど、
現地の人が色々と教えてくれたけど、
「へぇ〜」と相づちを打つのが精一杯だった。

しばらくして、頂上に到着。

「ガスが発生しているので、
心臓が悪い人や体調が悪い人は死んでも知らんで」
という内容の看板が見えた気がしたけど、
ここまで来て引き返すわけにもいかない。

気温は5℃。
風も強く、凍えるような寒さだったけど、
痛みのせいかあまり気にならなかった。

火口は迫力満点だった。
きっと、具合の良い時に来ていたら
テンションが上がっていただろう。
でも、もう僕には限界だった。

寒さを理由にして早めに火口から退散し、
車で熊本空港へ。

現地の人に
「今日は色々とありがとうございました」と
涙まで流しながらお辞儀をしている僕は、
きっとかなりの好青年に見えただろう。

空港のロビーに着いてすぐ、
薬局を探して頭痛薬を購入。
「セデスはちょっと女子っぽいかな」とか思ったけど、
もうなんでもよかった。

急いで錠剤を飲んだ後、
とりあえず嫁にメールを送る。

「もしかしたらこれが
ダイイングメッセージになるかもしれない」と思い、
頭が痛いがお土産を買って帰ると書いたら、
「お疲れ。今日はコロッケ。先に寝るわ」と
拍子抜けの返事だけが返ってきた。
あまりの温度差に、違う意味で涙が出た。

帰りの飛行機に搭乗してからは、薬の効き目もあり
しばらくはましなフライトだったけど、
やっぱり途中から激痛が始まった。

そんな僕を見て、
隣の席の夫婦が声をかけてくれた。

「あの〜、大丈夫ですか…?」

「あ…、はい。
大丈夫なんでそっとしておいて下さい」

夜の飛行機。

一人でボロボロ涙を流している僕は、きっと
昔の彼女と乗った飛行機を思い出して
センチな気分になっている男のように見えたのだろう。

そこからはできるだけ手で顔を隠し、
着陸まで地獄の時を堪え忍んだ。

フラフラになって家に帰ると、
家族はみんな眠っていた。

ソファにぐったりと座り込み、
頭痛の原因を調べるとこんなページが。
http://blog.m3.com/atama-chie/20070719/1

なるほど。全部当てはまる。
しばらく飛行機はやめておこう。

今日は水曜日で休診だから、
明日、病院に行こうと思う。ふぅ…。