No.1302&1345 はじめての「骨折」日記(ドクターKと完治をめざして)

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●今日のおはなし No.1302●

ドクターK。
三振をとりまくる野茂のことではない。
僕の骨折を診てくれている主治医のこと。

この間、数カ月ぶりに病院でレントゲンを撮ったら、
ドクターKにこう言われた。



 「おー、予想よりも早くくっついてきとるなぁ。
  2年はかかると思ったけどなぁ」



うそつけ。アンタ最初は
「年末までにはくっつく」って言ってたやんけ。
2年なんて初耳だぞ。



 「この調子やったら、よし! OK!
 もうじき腕に入ってるピンを抜いても良し!
 6月以降で抜きたい時があったらいつでも来て」



そんな気軽に風俗案内所の兄ちゃんみたいなことを言いやがって。
ドクターK、おそるべし。
あ、そうだ、



    「あのー先生、この前も聞いたんですけど、
    最近腕の上から肩のあたりで音が鳴るんです。
    これって大丈夫なんですかね?」



 「おぅ? どれどれ…。
 (ガキッ)うーん、この音はもしかしたら、
 骨折した時に肩関節の腱板を損傷しとる可能性があるな」



!? 腱板損傷? そいつも初耳やぞ。
それがホンマやったら、大事やないか!



 「MRI検査をせなわからんけど、ま、どっちみち
 今は腕にピンも入ってるから無理やわ。
 ピンを抜いたら検査しよか」



    「…え、先生、それってひどかったら手術ですか?」



 「ハッハッハ、ひどかったらな。
 肩なんてメス入れたら3カ月は入院やわ。ハッハッハ」



わっ…、笑い事じゃないぜ、ドクターK。
こっちはアンタの目の前でフリーズしてるってのに。



    「…と、とりあえず、まずはピンを抜くしかないんですね?
    今度は局所麻酔でいいんですよね?」



 「いやいや、局所麻酔であんなでっかいピンを抜こうとしたら、
 アンタ気を失うで。全身麻酔で一泊二日のお泊まりコースね♪」



そういって、カルテに大きな文字で
「一泊二日 全身麻酔」と書き綴りだすドクターK。

彼が「腕の治療に関しては大阪トップクラス」と
言われている医者でなければ、
その場でドロップキックをしていたところだった。

そんなこんなで、6月以降、また入院します。
あ! そういえば、うちの出産予定日は7月やった。

子どもが出てくるのが先か、ピンが出てくるのが先か、
こうご期待。(何をやねん)

 




●今日のおはなし No.1345●

ドクターK。
この名前に聞き覚えはないだろうか。

そうそう、この前書いたけど、
僕の折れた腕を診てくれてる主治医のことだ。

「よし! 6月以降なら
いつでも腕のピンを抜いて大丈夫」って言ってたから、
昨日、さっそくドクターKのところに行って来た。

ところが、待つこと2時間、
診察室の前で待っていても、なかなか順番がやってこない。

21時過ぎに太った看護士のおばちゃんから「H、さぁーん」と
呼ばれた時には、僕はすっかり衰弱しきっていた。

部屋に入ると、さっき撮ってきたレントゲンを
ドクターKが診ているところだった。
そして開口一番、こう言ったのだ。



 「すごいなぁー。若いなぁ。くっついてきとる。
 これやったら、夏にはピンが抜けるな!」



普通の患者なら、それはとてもうれしい言葉だっただろう。
だけど、僕には違った。

なぜなら、この前病院に来た3月、
まったく同じような言葉を言われていたからだ。



 〜(3月の回想シーン)〜
 「すごいなぁー。若いなぁ。くっついてきとる。
 これやったら、6月にはピンが抜けるな!」



「6月」が「夏」になっただけのその台詞を聞いて、
僕はまるでリプレイ映像を観ているような、
デジャブを感じたような気がしていた。



    「あ…、あのぉ先生、この前6月って
    おっしゃいませんでしたっけ?」



 「ハッハッハッ、いやぁ、まぁ6月でも行けるけど、
 そう焦りなさんな。お盆ぐらいに会社に休みとって入院したら?」



その時もしも僕の手に生クリームののったパイがあったなら、
思いっきりドクターKに投げつけていただろう。

ただでさえ2時間も待たされて不機嫌だった僕にとって、
主治医のアバウトな意見は、まさに火に油を注ぐようなものだった。

しかし、手術で僕の体にメスを入れるのがコイツだとすれば、
ここでドクターKを敵にまわすわけにはいかない。

回し蹴りをくらわすなら、手術後にしよう。
そう悟った僕は、怒りを抑えて話を進めることにした。



    「わかりました。8月のどこかの木曜日で
    手術日の希望を言ったらいいんですね?」



 「いや、木曜じゃなくて水曜か金曜やな」



    「え? だって、先生、木曜しか来ないでしょ?」



 「いやいや、僕は執刀せんよ。
 たぶん井上くんか、岡村くんやな」



    「え…?」



衝撃だった。

まるで、成人した頃に
「実はあなた、ウチの子じゃなくて
サダム・フセインの子なの」と打ちあけられたぐらい。

ちなみに、「井上くん」は
僕の前の手術を担当した売れっ子外科医で、
今は独立して病院を去った。

その代わりにやってきた売れっ子外科医が「岡村くん」。
どちらも名医なのでそれはそれでいいのだが、
まさかこの1年間ずっと診てきたドクターKが
さじを、いや、メスを投げるとは思ってもいなかった。

あまりの出来事に呆気にとられつつも、その瞬間ふと思った。
「…待てよ、コイツが執刀しないなら、
何も僕はこんなに下手に出なくてもいいじゃないか」と。

そこから、僕は金を貸した後の
ヤミ金融の取り立て屋さん並みに強くなった。



    「わかりました。水曜でも金曜でもどっちでもいいですわ。
    たしか1泊2日でよかったですよね?」



 「いやいや、2泊3日は必要やで」



    「ちょっと待ってください!
    先生、この前1泊2日って言いましたよね?
    ほら、そこのカルテにも自分でメモしてるじゃないですか!」



 「えっ…、あ、ホンマやな…。なんでやろ?」



    「『なんでやろ』じゃなくて、どっちなんですか?」



 「いや、すみません。2泊3日です」



    「じゃあ、話をまとめると、8月の水曜か金曜、
    具体的には火・水・木か、
    木・金・土の3日で考えればいいんですね? ねっ?」



 「そっ…、そういうことです」



患者から一変し、
ビジネスマンのトーンで話を繰り広げた僕に、
ドクターKは少し驚いていた。

今思えば、少し悪いことをした気もするが、
夏までには→冬までには→春までには→6月までには→夏までには、と
何度もじらされた僕の我慢はもう限界だったから仕方ない。

そういうわけで、
次回からはドクター岡村を訪ねることが決定した。

さらばドクターK。
アンタのことは、いろんな意味で一生忘れない。
でも、約1年間ありがとう。

彼の名誉のために言っておくと、
こんなキャラでもドクターKは、
関西で名医として知られているベテラン医師である。