No.11 一人暮らしの留守番電話

「誰かおるの分かっとんねんぞぉ-」と、一発かましてから
いつもどおりの一人の部屋に帰宅。
ふと見ると、留守番電話でランプが点滅している。
 
再生を押すと、まずは母の声。
 
 
「生きてるんですか、死んでるんですか-?
 たまには電話してくださ-い」
 
 
コ-トを脱ぎながら、ちょっと笑う。
と、思ったら
 
 
「お姉ちゃんにかわりま-す」
 
 
オイオイ、たらい回しか?
 
 
 「お姉ちゃんで-す。
  えっとな-、お姉ちゃんやっと自分の車買って-ん。
  お父さんはブツブツうるさいけどな、関係ないね-ん」
 
 
また笑いながら、
冷蔵庫のポカリスエットを口につける。
 
 
 「お父さんにかわるね」
 
 
何?俺の一番苦手な相手。
 
 
 「お父さ-ん。お父さん、何照れてるんよ。
  しゃべったらエエやんか」
 
 
20秒ほど束の間のやりとり。
そんなもん留守番電話でやるなよ。
 
親父が出る。
 
 
  「もしもし!Sくんかいな?」
 
 
何で他人行儀やねん。
 
 
  「元気でやっとるんかいな?」
 
 
アンタには言わんけど頑張ってるっちゅ-ねん。
 
 
  「またな!ガチャ。
   プ-ッ、プ-ッ、プ-ッ。
   9月16日午後9時16分、1件です。ピ-ッ」
 
 
 
「ホンマ何やねん、この家族は」
ベランダでタバコを吹かしながらの独り言。
気がついたら、親父と同じタバコを吸っている。
 
何だかんだ言っても、
親父よ、俺はアンタの息子だ。