No.101 素直になれない父と子

休みの間に 一日だけ実家に帰った。
毎度のごとく 俺が帰ると家が騒然とする。
 
「夜10時に帰る」といって、
ちょうどその時間に家に着く。
 
 
 
    ピンポ~ン。
 
 
 
まず出迎えるのは、やっぱりオカン。
 
靴を脱ぐと 階段をかけ降りる音とともに
半狂乱な姉キの声がする。
 
 
 
 「おっ、かっ、えっ、り-!」
 
 
 
とりあえず食卓のイスに腰を下ろす。
な~んにも変わってない いつもの実家。
電子レンジだけ変わったかな。
 
姉キが2階に親父を呼びに上がる。
 
 
 
 「お父さ-ん!お父さんて。
  も-、S史が帰ってくるまで起きとけって
  言うたんお父さんやろ-!」
 
 
 
親父は起きてるくせに 2階からなかなか下りてこない。
 
しぶしぶ親父が下りてくる。
 
 
 
   「ワシ、そんなん言うてへん」
 
 
 
 「言うたから 私もお母さんも起きてるんやろ-!
  も-、エエ加減素直になったら-。
  何歳まで息子と会うのに照れてるんよ。」
 
 
 
親父と姉キの言いあい。
 
オカンは笑って飯をよそう。
俺は黙って味噌汁をすする。
うまい。
 
来た。親父だ。
 
 
 
   「S史くん、元気かいな。」
 
 
 
 「うん。」
 
 
 
   「そうか、ワシはもう寝るわ」
 
 
 
親父は姿を消した。
 
その後深夜まで
オカンと姉キからの質問ぜめ。
無事帰ってきた宇宙飛行士の記者会見みたいに。
 
我が家の夏の夜は
そんなドタバタの中ふけていった。