No.3134 ダイニングテーブル

ダイニングにある小さなテーブル。
10年以上の月日をともにしたおかげで
たくさん傷がついたテーブル。
 
4人で座るには狭くなってきたから、
新しいテーブルを買うことにした。
嫁も子どもたちも、みんなで一緒に選んで。
 
来週、我が家に新しいテーブルがやってくる。
それは同時に、
長年愛用したテーブルと
「さよなら」することを意味する。
 
このテーブルの上で
結婚して初めての夕食を二人で食べた。
 
このテーブルの上で
沖縄の雑誌を眺めながら大好きな紅茶を飲んだ。
 
このテーブルの上で
産まれたばかりの息子の沐浴をした。
 
このテーブルの上で
育児疲れで眠ってしまった嫁に毛布をかけた。
 
このテーブルの上で
もうすぐお兄ちゃんになる息子に男を教えた。
 
このテーブルの上で
仕事のストレスを忘れたくてビールを飲んだ。
 
このテーブルの上で
出産で里帰りしている嫁と息子を相手に長電話をした。
 
このテーブルの上で
娘の名前を初めてペンで書いた。
 
このテーブルの上で
子どもたちの育て方について
深夜まで意見を交わした。
 
このテーブルの上で
家族みんなでケーキを囲んで
誕生日パーティーをした。
 
このテーブルの上で
新しく買う家のローン計算をした。
 
このテーブルの上で
娘を膝に乗せて平仮名の書き方を教えた。
 
このテーブルの上で
子どもたちとニヤニヤしながら
お母さんへのプレゼントについて相談した。
 
このテーブルの上で
一人Jazzを聴きながら
本当の幸せについて何時間も考えた。
 
このテーブルの上で
嫁に決意を伝えて
新天地へ進む書類を書いた。
 
このテーブルの上で
目を閉じながら息子と娘の合奏を聴いた。
隣で嫁も聴いていた。
 
手料理、会話、笑い声。
このテーブルの上には
いつもいつも温もりがあった。
 
食卓は、家族の思い出が宿る場所。
 
振り返れば、自分が幼い頃もそうだった。
両親や姉と過ごした思い出のシーンには
必ず小さなダイニングテーブルが出てくる。
 
我が子たちの胸の中にも、
古くなったテーブルの記憶が残りますように。
 
そして、もうすぐやってくる
新しいテーブルの上にもまた
たくさんの笑顔があふれますように。
 
ねえ、
幸せってどんなカタチをしてると思う?
 
僕はね、
「小さくて四角い空間」だと、今思う。