No.448 「マスターのおごりやで」 in 天神橋筋商店街




 「マスターのおごりやで。」



目の前に不意に並べられた、
“焼きなす”と“まぐろの目玉”。
うーん、ピーンチ!…

昨日、友達2人と天神橋筋商店街の
とある大衆居酒屋に行った。

軽く飲みながら晩飯を食うつもりだったから、
ビールを1杯飲んで、焼き鳥や天ぷらを食いまくってた。

おなかが一杯になった頃、
横のおっちゃんが僕らにこう言った。



 「マスターのおごりやで。」



すると、みるみるうちに
テーブルが“焼きなす”の山に…。

飲み屋に若者が来て、
ビール1杯しか頼んでなかったから、
「金がないから我慢してる」とでも思われたのだろう。

おなかは一杯だったんだけど、
せっかくの気持ちを断るわけにもいかず、
“焼きなす”をたいらげる。

そうしているうちに、
今度は“まぐろの目玉”が運ばれてきた。
やっぱり、マスターのおごりらしい。

半ば呆気にとられる僕達。

隣の席では、赤ら顔のおっちゃん4人にまじって、
マスターがビールを飲み始めていた。

コワモテのマスター。
「遠慮せんと、食ったらエエがな」と
プレッシャーのような優しさが飛んでくる。



   「どうする…?」



     「…食うしかないやろ」



気持ちはめちゃ嬉しいのだが、
胃はけいれんを起こしそうな僕達は、
お気持ちに甘えて(?)まぐろに喰らいついた。

アカン、水が欲しいわ…
と思ったその瞬間、目の前にグラスに入った水が。

うわ〜、グッドタイミング、と思って、
グラスに口をつけ、
一気に口の中のモノを流しこもうとすると…、
?…ゲホッ、いきなりむせた。

水と思ったそのグラス、
違う、酒だ。
水に見せかけた吟醸酒の冷だ。
やっぱりマスターのおごりらしい。

ちょっとクラッときながら
飯をたいらげ(※少し残したけど)、席をたった。



 「兄ちゃん達、どっから来やはったん?」



と、赤ら顔のおっちゃん客。



   「新大阪です。」



 「そりゃ遠路はるばる、よォ来てくれたなぁ」



おっちゃんサークルの間で笑いが起こる。
みんなご機嫌だ。

その時である。
一緒に飲んでいたマスターの目が光った。



 「新大阪?」



え?なんで? 殴られるん?



 「あそこは、わりとエエところやな。
  また、おいでや。」



ホッとひと息。
なーんや、めちゃ優しいやん。

「ごちそうさまでした」を10回ぐらい言って、
僕らは店を後にした。

ちょっと冷や汗だったけど、
なんだか久しぶりに“人のあたたかさ”に触れた夜だったな。

お代は、1人1100円。安っ!
また行くぞ。
マスターと飲み明かすぞ。