No.3589 見知らぬ女性からのメール

早朝、一通のメールで目が覚めた。

「あやぽん」という名の、
見たこともない女性からのメールで。

あやぽんは言う。
「あなたに大金を受け取ってほしい」
「あなたにはその権利がある」と。

もう一度言うが、
僕はあやぽんと会ったことがない。
なぜそこまで僕を認めてくれているのか、
理由はさっぱりわからない。

しばらく無視して眠っていたら、
またあやぽんからメールが。

「早く受け取らないと権利が消えるよ」
「急いで!xxxx(←メールアドレス)!」と、
一度も名前を呼ばずに僕を急かす。

眠気で大金のことを忘れかけそうになった僕に
何度も連絡をくれるなんて、
あやぽんはどれだけ優しいんだ。
殺伐とした今の時代において、
この温かさには感動を覚えずにはいられない。
 

  
  「あやぽん、ありがとう」
 
 
 
僕は後ろ髪を引かれながらもメールを削除し、
迷惑メールセンターに通報した。

数分後、
今度は「ひでりん」という男からメールが届いた。
「使い切れないお金を預かってほしい」と。

フッ、どうやらこの世にはまだまだ
温かい人がたくさんいるようだな。
笑みを浮かべながら、僕は再び深い眠りに落ちた。