No.3795 イキリーマン


この世には、色んなサラリーマンがいる。
その中でも、ちょっとイキってるサラリーマン、
略して「イキリーマン」について今日は話そう。
 
 
昨日の昼のことだ。
よく行くうどん屋さんのカウンター席に座ったら、
隣にサラリーマン2人組がいた。

一人は20代半ばぐらいの若い兄ちゃん。
もう一人は、30代後半ぐらいの落ち着いたメガネ男性。

漏れ聞こえて来る話の内容から察するに、
出張で関西にやって来たメガネ男性(客)を
若い兄ちゃん(営業)が車で案内している感じだった。

昼食にうどん屋を選んだのも、
「せっかくだから、お客さんに関西のだしを味わってもらおう」
という小さな接待のつもりだったのだろう。

ここまでは何の異論もない、よくある光景である。

しかしその後、僕は
その兄ちゃんのイキリーマンっぷりに
心の中でツッコミまくることになる。
   
  
  
 「会社、どうっすか? マジっすか?
  売上キツイんっすか?そりゃそうっすよね」
  
  
 
この兄ちゃん、お客さん相手に
よくこんなにイキってノリノリで話すな…。
どこから来るんだこの自信は…。

もう少し耳を澄ませる。
  
 
  
 「マジっすか! 誰のせいですか?
  そんなん、国が払ってくれるんですか?
  経済が悪いとか言えないっすよね」
  
  
  
中身も無く、空虚に広げられる大風呂敷。
国とか世界とか、やたらとデカイものを出しては
あたかも自分がそれに関わっているかのように話すのは
イキリーマンの中でも最も顕著な特徴である。
 
しばらくして、その兄ちゃんは
真横できつねうどんを食べている僕など気にせず、 
至近距離でタバコを吸い始めた。
まるで、僕の耳元に吐息を吹きかけるかのように…。
   
 
  
 「ボク、
  マルボロのこのタイプしか吸えないんっすよね」
 
  
 
出た~!

よくわからないけど、
玄人っぽく演じる変なこだわり。
「オレは普通の人間じゃねーぜ」というイキリーマン感が、
ダバコの銘柄からもあふれ出ている。

足を組んで、吹き上げるように煙を吐き、
何もないのに遠くを見つめる兄ちゃん。
ナルシストっぷりも完ぺきだ。

ここまでのイキリ作法を習得したリーマンを、
僕は初めて見たかもしれない。
 
イキリーマンの独演はまだ続く。 
 
 
  
 「え? 今日の現地っすか?
  ここから車で45分ぐらいっすかね~。
  ま、ボクが本気出したら20分で着きますけどね」
  
  
  
すげー。
彼がやる気になれば
営業車の時速も2倍以上になるらしい。
  
  
  
 「関西どうっすか? かなり庶民的っしょ。
  なんでも聞いてくださいよ。ボクの庭なんで」
  
  
  
庭っ、広ぉ~っ!!  

さすがはイキリーマン、
600円の定食を食っているとは思えない
富裕層チックな発言だ。

そうこうしているうちにお会計の時間。
  
  
  
 「じゃあ、行きましょっか。
  え? あぁ、そんなんいいっすよ。ここはボクが、
  え、マジでいいんすか? あーざーす」
 
 
 
いや、そこは会社の金でもエエから
お客さんの分までお前が払うやろ!!

さっきまで石油王並みにイキってたのに、
急に20代のボンビー感を出すのやめてや。笑えるから。
  
 
  
そうして、
イキリーマンとメガネ男性は
店を出て行った。

周りの客もみんな同じことを感じていたのか、
イキリーマンが出て行った瞬間、
店内で少しだけ失笑が起きた。

その後のイキリーマンの行方は知らない。
彼の話が事実であれば、
メガネのお客さんを営業車に乗せ、
目にも止まらぬ速さで国道を走り抜け、
20分以内に目的地に着いたことだろう。

いや、彼ほどのスケールの持ち主なら
車なんて使うまでもなく、
「どこでもドアっすか? 実家にありますよ」
とか言ってそうだ。

二度と会いたくないようで、
もう一度見てみたい気もするイキリーマン。
その口癖が、うつりそうっすよ!