No.3923 電車の中のトレンディドラマ

人と人が話す。
楽しそうに、笑いながら。

とても素敵な行為なのに、
電車の中だとなぜあんなに鬱陶しいんだろう?

特に、そう、
それが男女の会話だと余計に腹が立つ。
調子に乗った男女の会話なら、なおさら。
 
 
数日前、夜に電車で帰っていると
同じ職場の先輩&後輩風の20代の男女が
吊り革を持ちながら話していた。

夜の通勤電車というのは
みんな疲れて基本は静かなので、
若くて少し高めの二人の声はよく響く。

離れていても会話が聞こえてきたけど、
僕が一番苦手なタイプの会話だった。

なんというかな、うまく言えないんだけど、
たいして経験もない男がイキッて恋愛を語り出し、
たいしてモテそうもない女がイイ女ぶる、みたいな会話。

将棋の藤井君のような顔立ちの先輩男が
「かずみちゃん、なんだか最近元気なくない?」と、
カッコをつけながら語りだし、
「まぁ、かずみも色々あるみたいですよ。
 女子の秘密だから言えませんけどね♪」と
オアシズ大久保のような後輩女がもったいをつける。

いや、別にいいと言えばいいのだ。

人類にはおしゃべりをする権利があるし、
誰にだって背伸びしてイキる権利はある。

でも、その話し方や仕草があまりに
「ドラマの見すぎやろ~!」という感じで。

「○○先輩、いっちゃえばいいんじゃないですか?
 いいですよね。かずみはかわいいし、性格もいいし、」
と、上目遣いで話す女。

どうやら自分の方に先輩の気を引きたいみたいで、
「そんなことないよ、君の方が…」としか
答えようがない質問を投げかける女。
中学生レベルの恋の駆け引きに、思わず鳥肌が立った。

「かずみちゃんに俺は似合わないよ。
俺はもっと、君みたいな…いや、なんでもない」
と、わざとらしく間違える男。

もう、ここまで来たら恋愛コントである。
周りの乗客も、ちょっと半笑いで
子どものような二人のやりとりにじっと耳を澄ませていた。

え? 最終的にどうなったか、って?

先輩男が先に電車を降りた後、
後輩女は夜の車窓に映る姿を眺めて
恋する自分に酔っていましたわ。

きっと彼女には、
自分が有村架純のように見えていたんだろうな。

いや、いいんだ。
人類には妄想する権利がある。

ただ、コントなら
もう少し笑える感じにしてほしい。
その中途半端さが、不快に感じる原因か。

けっこー電車の中では見かけるよ。
この手のベタな男女の会話。
「俺も見た!」「私も見たことがある!」という人は、
エピソードカモン!