No.4117 男は辛いよ

深夜3時。

最近は、この時間に
起きていることが多くなった。

睡眠が趣味みたいなものだったのに、
ったく、どうしたもんだか。

真夜中の暗闇の中、静寂に包まれたリビングルーム。

壁掛け時計の秒針だけが
ひたすらに何かを刻み続けている。

ずっと同じリズムで、一心不乱に、
冷静かつクレイジーに。

大丈夫?
お前、たまには休めよ。
まぁ、俺もだけど。

男の愛は、
たいてい大きすぎて伝わらない。
思えば、うるさい親父もそうだったか。
そういうもんなのか。

渥美清じゃないけれど、
つくづく辛いね、男でいることは。

何度もかみしめたような苦味が、
今日もまた、胸の奥へと落ちていく。

そうこうしているうちに、
闇が少しずつ薄暗い紺色へと変わっていく。

朝が来る。
強いふりをした男の一日が、また始まる。
その前に、もう少しだけ眠ろうか。

腹を出してる息子よ、
今のうちにたっぷりと眠っておけ。
お前も男になる前に。

そして僕は今日も
娘の左頬にキスをして、
息子のタオルケットをかけ直し、
嫁の後ろ髪を撫でながら横になる。

まるで、何事もなかったかのように。
独りで静かに、
朝という運命が迎えに来るまで。