No.4372 青より緑を選んだ理由

緑は体にいい。
青は心にいい。

今住んでいる場所は
緑に囲まれているけれど、
本当は、ずっと海のそばに住みたかった。
青がそばにある暮らしをしたかった。

実際に、海辺の家を見に行ったこともある。
少々南の方で距離はあったけれど、
通勤時間なんて関係ない。

電車で行けない場所などないし、
職場に合わせて暮らしを調整するなんて
本末転倒だからね。

内覧した家は今でも鮮明に覚えている。
津波を考えて少し高台にあり、
そのぶん、沖が遠くまで見渡せた。

縁もゆかりもない場所だったけれど、
青が僕の心を誘った。

でも、結果的には
緑ある暮らしを選んだんだよ。
今でも思う。なぜだったんだろうな?

たしか、あの時少し考えたのは
自分が家にいる時間のこと。

家は僕の名義でも、
実際は他の家族の方が長く暮らす。
自分の寿命を考えても。

青にひかれる心を
最後まで貫けなかったのには、
そんな理由もあった。
自分の心の安定よりも、
家族に何かを遺したかった。

おかげで、
たまに海のある場所に行くと
自分の中で時が止まる。
それはそれで心地いい。

良かったのかもしれないな。
普段は緑の生活で、たまに青に染まるのも。
今はそう思う。負け惜しみだけど。