「5円玉がはいってもエエかいのぉ?」
タバコ屋のおばあちゃんは、しわしわの手を差し出し、
10円玉4枚と、5円玉2枚のお釣を僕に手渡した。
硬貨からかすかに感じる、
おばあちゃんの手のぬくもり。
まぎれもない、人の温かさ。
秋という季節のせいだろうか。
乾いた胸が、少しきゅんと鳴いた。
数日前の出来事である。
昨日の「5円玉キャッチ」を見ていて、
改めて思ったことがある。
お金って、なんだか欲深いイメージしかないけれど、
実は、ふれあいが少なくなりがちなこの世の中で、
一番、人と人との間のふれあいを
演出しているものじゃないだろうか、って。
もちろん、デジタル社会の到来で、
お金は画面上の数値として扱われるようにもなった。
けれど、やっぱり財布を持ち歩かない人は
ほとんどいない。
現実的に、毎日毎日、
お金は人と人との間を行き来してるのだ。
「媒体」という言葉がある。
辞書に載っている意味で言えば、「なかだちをするもの」。
お金とは媒体である。
もっと限定して言うならば、人から人へ、
価値とぬくもりを運ぶ媒体だ。
財布の中をのぞいてごらん。
ごちゃごちゃしている硬貨の集まり。
それは、あなたのものであって、あなたのものではない。
いつの間にかあなたのもとに舞いこんできて、
そしてまた、いつしか誰かのもとへと、
あなたのぬくもりを運ぶ、かわいい子供たちである。