No.889 書きかけた手紙の言葉

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書きかけた手紙を、よく捨てる。
もちろん、心の中での話だけど。

もしも、これまで捨てた手紙をぜんぶ集めたら、
そこには違う僕の自伝ができるかもしれない。

表に出している自分の声、表情、感情は、
必ずしもすべてが自分と一致しない。
もしかしたら、捨ててきた手紙に書かれてある自分のほうが
本当の自分かもしれない。

実は今書いているおはなしも、
一度書いたおはなしを捨てて改めて書いている。
僕がこの前に何を書いていて、なぜ捨てたか、
それは僕以外の誰も知らない。
本当の僕は、僕しか知らない。

と、思っていたところに、
たまに本当の僕を知っている人が通りかかる。

僕が書きかけて捨てた手紙を、
拾うことなく、読むこともしないのに、
僕が途中まで書いたその内容を知っている。

僕はそいつに聞く。
「え、なぜ知ってるん?」と。

すると、そいつはたいていこう答えるのだ。
「書きかけた手紙の内容は、誰でもたいてい同じものだ」と。

人はそれぞれだけど、実は似ている。
気の知れた人同士なら、もっと似ている。

だから僕も、人の心が分かる時がある。
その時はたいてい、自分の心に問いかけている。