No.938 古い外国の話


世界的に有名な犯罪組織、マフィア。

彼らは金と権力を得るためなら手段を選ばないという。
たとえ、爆弾を仕掛けた列車に、
愛する自分の家族が乗っていたとしても。

今も昔も、人間はあまりに物事に執着すると、
何も見えなくなる生き物なのだろうか。


古い外国の話である。

ある所に、人形を作るのが上手な男がいた。
男は街でも評判の真面目な青年で、毎日小屋にこもり、
せっせせっせと一生懸命働いていた。

そんな男にも同い歳の彼女がいた。
優しい性格で、きらきらと綺麗な目をしていたその娘は、
男にとってかけがえのない自慢だった。


冬が近づいた頃。

男はある計画を思いついた。
「クリスマスに、彼女にとても素敵な
 人形を作ってプレゼントしよう」と。

その日から、寝る間も惜しんで人形作りに神経を注ぎ、
男は顔がやつれるほど働いた。


クリスマスが近づいたある日。

完成間近の人形を前に、
男はうつろな目でその美しさに見とれていた。



 「あと少し…、あと少しだ」



男は彼女への想いをこめて、
最後に人形の目に“サファイヤ”を入れようと考えた。
しかし…、貧乏暮らしの男には、どこにもそんなお金はなかった。




クリスマスイブの夜。

男は雪の降る小屋の中で、
きらきらと美しい目が輝く人形を抱きかかえていた。

そして、両目から血を流して
動かなくなった彼女に向かって、そっとこう囁いた。



 「メリークリスマス」



古い外国の話である。