No.1062 妻へのラブレター


朝5時。
静かな暗闇で鳴る目覚まし時計を慌てて消して、
目をこすりながら洗面台に向かう。

睡眠時間が短かったせいか、
さっきも鏡の前で歯を磨いていたような不思議な感覚。
鈍い疲れが胃に残っているのを感じながら、
むりやり自分をいきりたたせるように髪を整える。

夜明け前の朝は静かだ。
物音一つ聞こえてきやしない。

すやすや眠る嫁に布団をかけ直し、
起こさないようにそ−っとスーツ姿に着替えてから、
さっきとめた目覚まし時計のアラームを
2時間後に鳴るようにセットして家を出た。

金沢に向かう車中、
「アイツは寝坊せずにちゃんと起きれたかな…」と想いながら
窓の外を見つめる自分。

まだまだ若いからか、経験が浅いからか、
玉乗りをしているピエロのように、
人生はいつも不安定な気がする。

でも、そんな僕にだって
確かな存在を感じるものだってあるんだよ。

悲しいニュースや事件を聞くたび、
目の前の笑顔が幻想に見える時もある。
ある日突然この光景が、
思い出に変わってしまうんじゃないかって。

照れくさくていつもは言えないけれど、
てきるだけ、なるべく、そんな日が来ないように、
今はただ、手をつないで歩いていこう。