No.1127 天空のチャペル

僕らの知らない場所があるとしたら、
それはきっと、海の中か山の上だ。

先日、とある場所をドライブしていたら、
春の風に乗ってどこからか「鐘の音」が聞こえてきた。

不思議に思い、風上のほうを見ると、
山の上に何か白い建物があるではないか。

車を停め、その場所をめざして歩いて登ると、
まるでプールにある飛込み台のような
ほとんど階段だけで出来ている
小さな「展望台」のようなものがあった。

 「へ〜、大阪にこんな場所があったんだ」

階段を上りながら横を見やると、
眼下に広がる大阪の街。
ずっと向こうには、海、海、海。
その上には、真っ青な空がいっぱいに広がっていて、
僕の頭上までつながっていた。

数十段ぐらい階段を上った頃だっただろうか。

空へと伸びる白い階段の先に、
金色の鐘がぶらさがっているのが見えた。

  「へ〜、まるで天空のチャペルだ」

ふと、まわりの手すりを見てみると、
カップルの名前が書かれた「南京錠」がたくさんかかっていた。
「ずっと一緒でいれますように」とか、
願い事も書き添えて。

  「空に近いこの場所なら、
   神様に願い事が届きそうだな」

久しぶりに、心から自然に笑えた気がした。
何かを忘れたら、あの場所に行こうと思う。

どこにあるかは、ここでは内緒にしておこうっと。
そうしたほうが、
みんなも素敵な場所を探すわくわくがあって
楽しいと思うから。