No.1172 『家族』というタイトルのビデオテープ

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土曜日、夏の帰省という名目で
嫁を連れて実家に帰った。

昼過ぎに家に着いたら、
待っていたのはオカンお手製、
「おもてなししまっせ!」風な昼ごはん。

揚げ物にサラダに、酢の物、スープ、
最後はアップルパイまで、
狭いテーブル一杯に料理が並んでいた。




 「ったく、これを毎日出してりゃ
  家を出て大阪なんかに行かなかったのに」



と、心の中でつぶやきながら食いまくる。

食事の後、オカンと嫁が
談笑してる声を子守り歌にうたた寝してると、
親父がビデオテープを片手に乱入してきた。



   「オイ、みんなでS史の三振を観るぞ!」



!?
親父が持っていたのは、僕が小学生の頃にやってた
野球の試合を映したビデオテープ。

ちなみにその当時は親父が監督で、
僕の野球生命の中でも一番スランプの時期だった…。

「なんでそんなん観るねん…」と、
ふて寝する僕におかまいなく、
強引に上映会が始まった。

ブラウン菅に映し出される懐かしい自分の姿。
あ…、あ、あ〜クソっ、三振した。



   「S史よ、なんで打てへんか分かるか?
    ヘッドが下がっとるからや」



 「うるさい。今さら言うな」



そんな親子の会話を、
笑いながら聞くオカンと嫁。
やっと野球のビデオが終了したと思ったら、
今度は別のビデオが上映されはじめた。

テープに書いてあるタイトルは「家族」。
中に何が映っているかは、なんとなく覚えていた。

まだビデオ撮影が珍しかった当時、
親父が会社から家にカメラを持って帰ってきて、
僕や姉キは大はしゃぎで騒いだから。

でも、観るのは何年ぶりだっだろう。
そこには10歳そこそこの自分と、
中学に入ったばかりの姉キ、
そして、なんとも若い30代の親たちが映ってた。

「ワシが」「僕が」とカメラの前のポジションを奪い合うように、
風呂上がりの上半身裸ルックで
ガッツポーズをとる親父と僕。



 「親子そろってアホやなぁ〜」



画面に映る小さな自分が笑ってそうツッこみ、
親父が嬉しそうに笑った時、
なぜか少し胸がじーんとした。



 「…こう見りゃ、いい家族じゃないか」


この歳になるまであんまり考えたことがなかったけど、
僕はそれなりに幸せな家庭で育ったんだ。
親父も不器用ながらに、
こんなチビ2人の笑顔が見たくて、がんばってきたんだな。

大阪に帰ってきた今も、
あの親父のガッツポーズ姿が忘れられない。

その背中に背負っていたもの、
その笑顔の理由、
今ならなんとなくわかる気がするぜぃ。

悔しいけれど、育ててくれてサンキューだ。
ただ、俺のバットスイングを
スローにして解説するのはもうやめてくれ。