No.5165 コンビニにやって来た婆ちゃんの言葉
ついこの間、
昼飯を食べた後に
駅前のセブンイレブンに寄った時のこと。
腰の曲がったお婆ちゃんが
コンビニ店員の姉さんに陳列棚を案内されながら、
こんなことを言っていた。
「アンタのお店、
ホンマ、なんでもよーさんあるなぁ~」
不意を突かれた言葉に、
僕は思わず商品を取る手を止めて
そのお婆ちゃんに見入ってしまった。
「あとはな、ワサビが欲しいねんけどな、」
「はい、ございます。こちらへどうぞ」
「えっ、ワサビまであるんかいな?
アンタのお店、ホンマにスゴいなぁ~」
店員の姉さんは、照れくさそうに笑っていた。
お婆ちゃんが放った言葉の
素敵なニュアンス、伝わるかなぁ。
まず、「アンタのお店」という言葉の
ほっこりさと奥深さよ。
コンビニなんてどこも同じパッケージで、
なんなら店員のお姉さんも雇われバイトに過ぎないのに、
そんな店員さんに
「そうか、お客さんの前では、私が店を代表してるんだ!」という
一人称の誇りまで感じさせてくれる。
これが計算した言葉だったら
恐ろしいほどテクニシャンだけど、
お婆ちゃんが言うからこそ、
ほっこりとして、胸に響く。
そして、「なんでもよーさんあるなぁ~」。
コンビニに商品が揃っているのは、
僕らからすると当たり前のことだ。
だって、それがコンビニ店の存在価値なんだから。
でも、改めてそれを言葉にされると、
当たり前に思ってしまっていた自分に気づき、
コンビニ店へのリスペクトまで芽生えてくる。
観察していると、
お婆ちゃんが買おうとしていたのは
「お茶」「つまようじ」「台所用洗剤」
「醤油」「ワサビ」「切手」「タバコ」とかだった。
たしかに、これが一度に揃う店は
コンビニぐらいしかないよなぁ。
お婆ちゃんはレジ袋に商品を入れてもらい、
何度も「ありがとうな、また来るさかい」と言いながら
セブンイレブンを出て行った。
なんだか、久しぶりにいいモノを見たな。
「アンタのお店」という
相手のやる気を高めるパワーワードは、
ぜひ積極的に使っていこうと思う。