No.5364 「オッサン」に関する研究結果
――皆さん、こんにちは。
今日の「研究最前線」は、
今、最もホットな研究を手がけられている
この方にお越しいただきました。
Hさん、よろしくお願いします。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
――それでは早速お話を伺っていきたいと思います。
Hさんは、先日、世界に先駆けて
「オッサンの定義に関する研究論文」を発表されて
話題になっていましたよね?
学術史上初、
インパクトファクター38という驚異の注目度ですが、
またなんで「オッサン」の研究をしようと
思われたんですか?
「はい、簡単に言うと、
私の中でオッサンという存在が
幼い頃からなかなか説明できない
テーマだったからです」
――オッサンが、ですか?
「そうです。
私たちは口ではよく
オッサンという言葉を使いますが、
そもそもオッサンって、
どんな人のことをさしているのだろう?と」
――なるほど、着眼点からして
少々ブッ飛んでいますね。
「皆さん、オッサン自体は
見たことはありますよね?」
――それは、間違いなくあると思いますよ。
かく言う私自身も、結構オッサンですし。
「それでは質問しますが、
オッサンの定義とは何でしょうか?
具体的には、どういう人がオッサンで、
どういう人がオッサンではないのでしょう?」
――う~ん…、
そう言われるとたしかに困りますね。
なんとなくの感覚だけで
オッサンかそうでないかを
判断していたかもしれません。
「そうなんです。
そういう風に、大多数の人が
感覚だけでオッサンを判断しているんですが、
やはり学術対象として扱う時には
定義が必要だと気づいたんです。
ただ、何度考えても
オッサンの定義がまとまらなくて…、
半年ほど前から、毎日
JRの中で中年男性の観察を行い、
仮説を立てては検証を繰り返してきました」
――朝から何をされてるんですか。
でも、そうした努力の成果が
今回の研究発表につながったわけですね。
「ええ。最終結論にたどり着いた時には、
私自身、目からウロコのような衝撃を覚えました。
きっと皆さんにも
驚いてもらえるのではないかと思います」
――今頃、全国の中高年男性が固唾を飲んで
この番組を視聴していると思いますので、
思い切って単刀直入にお聞きします。
オッサンかそうでないかは、
一体何によって決まるものなんですか?
年齢ですか?
髪質? それとも臭い??
「残念ながら、どれも違います。
オッサンかどうかを分けるポイントは、
ズバリ、“足”にあったんです」
――足!?
足の臭いとかそういうことでしょうか?
「いえ、具体的に言うと“足の長さ”ですね。
研究を繰り返した結果、
男性の足の長さによって
オッサンかそうでないかが
決まっていることが判明しました」
――そうなんですか??
なぜ足の長さが?
もう少し詳しく聞かせてください。
「いいでしょう。
いかにもオッサンという人の特徴として、
何か思いつくものはありますか?」
――えーっと、
やたらと態度がデカいとか、
ツバを吐くとか、顔がデカいとか。
「今、非常にいいヒントワードが出ました。
実は我々も最初の仮説では、
『顔の大きさ』に着目していたんです。
『オッサンは顔が大きいからオッサンなのでは』と。
でも、20~60代の男性を対象にした
人体リサーチを行ってみると、
そこまで極端に頭蓋骨の大きさが異なるような結果が
見つからなかったんですよ」
――そうなんですか?
でも、令和の小顔男子と昭和のオッサンとでは、
明らかに顔のサイズが違う感じもしますが?
「いえ、データ的には
ほとんど差はありませんでした。
よく考えればそうですよね。
1000年単位ならともかく、
たかが数十年程度で人間の骨格が
そこまで大きく変化するわけもありません」
――それなら、なぜオッサンたちは
あんなに顔がデカく見えるんですか?
「そこなんですよ。
そこが盲点だったんです。
我々がさらに研究を進めた結果、
オッサンは『顔がデカい』わけはなく
『デカく見えているだけだ』
ということに気づいたのです」
――見えているだけ?
だとしたら、
なぜオッサンはあんなに顔が大きく?
「一種の錯覚現象なんですが、例えばそう、
ドラえもんの顔って大きく見えるでしょ?」
――ええ、というか、
全体的に存在感がデカいですよね。
「でも、実際には
ドラえもんの身長はたったの129.3cm、
幼児並みの背丈しかありません。
それなのに存在が大きく見えるのは、
体全体に占める顔の割合が大きいから。
裏返せば、頭以外の部分が
極端に短いからなんです」
――あ~、そう言われれば、
ドラえもんって足も短くて、
2頭身ぐらいしかないですもんね。
「そうなんです。
つまり、顔の大きさというのは
実際のサイズ感で決まるわけではなく、
足の長さとの比較によって
大きく変わってしまうものなんです」
――なるほど!
そう言われて思い返してみたら、
たしかにオッサンって
み~んな足が短いですよね?
「そうでしょ?
これまで延べ15万人を対象に
街頭聞き取り調査を行いましたが、
足の長い60歳の外国人男性の写真を見せても、
誰一人として
『オッサンだ』と回答する人はいませんでした。
逆に、足の短い40歳の日本人男性の写真を
見せたところ、実に93%もの人々が
『オッサンだ』と回答したのです。
実際の年齢では20歳もの差があるのに、
足の長さが違うだけで
これだけの逆転現象が起きるんですよ」
――たしかに、これは目からウロコですね。
オッサンって、てっきり
年齢や老化に原因があると思っていましたが、
まさか足の長さで決まっていたとは。
「この説を立証できたことによって、
色々な対策方法もわかってきました。
足の短い人は、老けて見られる可能性が高い、
裏返せば、
オッサンに見られたく無ければ、
『足を長くすればいい』ということなんですね」
――でも、足の長さって
さすがに自分の力では
今からどうにもならないですよね?
「もちろん、
実際に足の長さを伸ばすのは無理でしょう。
ただ、同じように目の錯覚を利用して
長く魅せることはできますよね?」
――そうか! そうですよね!
「改めてオッサンの格好をよく見ると、
ほとんどの人は腹が出ているので
同時にベルトの位置も下がっていて、
結果、ダボダボの短いズボンを
穿いているように見えていました。
あれでは足が短く見えて、
顔が大きく見えるのは当然ですよね」
――なるほど。
きちんとしたベルトの位置を心がけるだけでも、
多少は足が長く見えますよね。
スリムなズボンにすれば、もっと足が長く見えるかも。
「そういうことです。
老化とは身体的な衰えをさすのではなく、
しいていえば、羞恥心の衰え。
その本質は『魅せ方の手抜き』に過ぎませんから、
オッサン化は後天的なものなんです。
年齢に抗うことは難しいですが、
オッサンと呼ばれたくなければ
足の長さの魅せ方にだけは
気を遣ったほうがいいですね」
――いや~、なるほど~!
60歳になる阿部寛や稲葉浩二が
まったくオッサンに見えないのは、
足の長さが理由だったんですね。
「お分かりいただけましたか?
最近、男性用の肌ケア・髪ケア商品が
かなり売れているようですが、
研究者の立場から言えば、
あんなものはいくら使っても
オッサン度合いは変わりません。
足ですよ、足。
足を意識してみてください」
――いや~、Hさん、
さすがにシースラグさんから
「男版・石田ゆり子」と称されただけのことはありますね。
本当の老いは足から始まる。
これは肝に銘じておきたいと思います。
「わざとくるぶしを出して
パンツの丈が足りていない感を演出し、
まるで足が長過ぎるように錯覚させるなど、
見た目に関するテクニックは
やはり女性の方が断然進んでいます。
足を長く魅せる方法は、
女性に教えを請うのも一つだと思いますよ」
――なるほど、それはたしかに一理ありますね。
「日本人男性の平均は約7.4頭身、
女性は7.1頭身ぐらいですから、
体格だけで言えば
断然女性の方が顔はデカく、
老けて見えるはずなんです。
でも、女性は昔から伝統的に
足の長さを魅せるテクニックを持ってきたので、
印象の平均では7.4頭身程度と
男性とほぼ変わらないんですよ」
――たしかに、
「女性だから顔がデカい」と思ったことは
一度もないですね。むしろ「小顔だな」と。
「逆に男性は、
先ほどのズボンの穿き方などもあって
印象の平均では7.1頭身にまで下がっています。
最新の研究結果では、
頭身が7を切ってしまうと、
『オッサン』として認知される数値が
一気に跳ね上がりますから、
男性は年齢にかかわらず
『気を抜けばすぐにオッサンになる』と
肝に銘じておいた方がいいです」
――いや~、本当に勉強になります。
男性用化粧品なんて買うのではなく、
脱オッサンのヒントは女性に学べ、ですね。
「そういうことです。
もちろん、女性だって気を抜けば
すぐに頭身が7を切ってしまい、
ドラミちゃん体型にまっしぐらです。
実際、高齢になると
どんどん丸くなっていく
おばあちゃんが多いですからね。
肌や髪のケアには手を抜いても、
足のケアには手を抜かない、気を抜かない。
ぜひ女性の皆さんも、
脱オバハンに向けて取り組んでください」