No.3274 ピエロが一番カッコいい
この間、
オカンから「サーカス」のチケットをもらったので、
土曜日に早速家族を連れて行ってきた。
よくよく考えたら、
サーカスを観るのって初めてでね。
子どもたち以上に、僕の方が
ドキドキ&ワクワクしていたかもしれない。
会場に到着し、設置してあった
大きなテントの中に足を踏み入れると、
日本なのに異国のような独特な雰囲気に包まれた。
生で観るサーカスのショーは圧巻だった。
アクロバティックな演技もあれば
男女で魅せる幻想的な演技もあり、
単純に「すげ~」と感心しきり。
とその時、
裏方のスタッフの動きが慌しくなって
「空中ブランコ」の準備が始まった。
「キタ~!
やっぱりサーカスと言えば
空中ブランコよね~!」
事件が起きたのはその時だった。
ワクワクしながら準備を見守っていると、
突然ピエロが観客席を物色し始めて。
気づいた時には僕の手を引いていた。
「サァ、オニイサン! ステージイクヨ!」
「へっ!?」
呆気に取られたまま、他3人の男性とともに
有無を言わせぬ力でステージに引っ張られ、
急遽“出演”することになった。。。
ただでさえ初めてのステージで緊張しているのに、
何をやらされるのかを告げられていない分、
余計に緊張度合いが高まる。
頭上では、
空中ブランコの補助網が着々と張られていく。
まっ、まさか…。
「ハイ、ジャア、ソコ、スワッテ」
捕虜になった観客は、僕を含めて4人。
何をやるのかも聞かされないまま
ステージ上でスポットライトだけ浴びせられ、
ピエロに指示されるがまま
互い違いの方向を向いて椅子に座らされ。。。
気分はまるで公開処刑。
遠くで子どもたちが
不安そうな顔をしているのが見えた。
「子どもたちよ、すまない…。
お父さんはここでピエロに殺られてしまうかも…」
そこまで腹はくくったけれど、
結局、空中ブランコではなく
4人でやる空気イスのような演技(?)を成功させて、
観客から拍手をもらいながらステージを後にした。
生きて席に戻った瞬間、
子どもたちを抱きしめたことは言うまでもない。
その後も、三谷幸喜の映画のような
どこかレトロで優しい雰囲気の中、サーカスは続き、
華やかなフィナーレダンスとともに終幕した。
今回、実際に初めてサーカスを観覧してみて
気づいたことがある。
それは、
一番ダメっぽいピエロ役を演じるのが
実は一番難しいということ。
ただでさえ集中力が求められる演技中に
ふざけたふりをしながら技を決めるのは、
相当の努力がないとできないだろう。
また、ふざけながらも
舞台のセットミスをチェックしたり、
失敗した仲間を励ましているのを僕は見逃さなかった。
事実、一番アホっぽいピエロは
サーカス団の座長を務めているようだった。
ピエロのように生きたいね。
色んな意味で新しい発見があったサーカス観覧だった。