No.4831 我が家版 IT革命2022 〜両親 vs スマホセキュリティ・スマートスピーカー~

 
 
 
 「よし、やっぱり帰るか」
 
 
 
水曜日、仕事を終えた後、
久しぶりに実家に帰った。
 
親父が酒を飲み過ぎて
現在地がわからないまま
深夜に助けを求めてきたり、
オカンがセキュリティロックをかけないまま
出先でスマホを紛失したり。
 
ここ1~2週の間に色々あったので、
「これは至急手当てが必要だ」と判断した。
 
ケータイ、パソコン、
スマホ、タブレット端末などなど、
過去、我が家では両親の生活レベルを上げるべく
小さなIT革命を何度も行ってきた。
(詳しくはバックナンバーを)
 
ただ、今回はちょっと事情が違う。
 
生活のレベルを上げるというよりは、
両親の老化に伴い、
「これ以上は急いで応急処置をしないとヤバい」
と感じたので、
次の日が祝日ということもあり、
僕は重い腰を上げて実家に向かった。
 
 
 
  「おかえり、まぁ、
   とにかくあがってくださいな」
 
 
 
実家に到着すると、
いつもの帰省とは違うムードで迎えられた。
食卓には鴨鍋と酒類がズラリ。
完全に接待モードである。
 
いつもより親の腰が低い理由は、
もちろんわかっていた。
 
 
 
   「いやぁ、この間はスマンかったな。
    おかげで助かったわ。
    飲み会の後、まったく覚えてへんねん」
 
 
 
 「なんとかタクシーの人が
 助けてくれたから良かったけど、
 冬なら路上で死んでたな」
 
 
 
  「私も、ご心配をおかけしました」
 
 
 
両親から立て続けに謝罪を受けた後、
とりあえず飯を食いながら
それぞれの経緯や顛末を聞いた。
 
だいたいは、
事前にイメージしていたとおりだった。
 
 
 
 「わかった。終わったことはもういい。
  ただな、外で酒を飲み過ぎたり、
  セキュリティもかけずに
  スマホを落としたりなんかしたら、
  息子だけじゃなく、周りの人に迷惑がかかるよな?」
 
 
 
   「うーん、そうやな…」
 
 
 
  「そうです…」
 
 
 
 「ということで、
  応急処置をしに帰ってきたから、
  二人とも、あとでスマホを出して」
 
 
 
飯を食い終わった後、
両親からスマホを預かった。
ちなみに、いつのまにか
新しいスマホに変わっていた。
 
事前には聞いていたけど、
電源ボタンを押せばパスコード入力もなしに
すぐに使えてしまうスマホが2台。
 
怖い、怖すぎる…。
まるで、個人情報を流出させるために
存在しているような端末だ。
 
 
 
 「俺は今まで、我が親に
  こんな危険な状態で
  スマホを使わせていたのか…」
 
 
 
そう思うと、
反省と後悔で心が痛んだ。
 
今回、帰省する途中で考えた
僕の応急処置プランはこうだ。
 
まず、親父の飲酒や
オカンのスマホ紛失の件を色々整理すると、
キーポイントは2つあって、
「セキュリティ向上」と「位置情報の把握」。
 
要は、紛失・行方不明になる前の対策と、
そうなった後の対策が必要だと結論づけた。
 
まずは、最低限のセキュリティ対策として、
「パスコードロック」「指紋認証」を設定。
 
次に、いざという時に遠隔でロックをかけたり、
位置情報から端末を捜索したりできるように、
簡単な見守りアプリも入れた。
 
他にも、誰かが両親のスマホを拾った時に
ボタン一つでこちらに電話がかかる設定や、
急病で倒れた時の医療情報
(血液型、緊急連絡先含む)の表示設定など、
どこでいつ倒れようが、
スマホを落とそうが、なんとかなる仕組みを整えた。
 
 
 
 「よし、とりあえずは完了」
 
 
 
   「設定は終わったんか?
    どうなったんや? 教えてくれ。
    おい、お母さん! ノート持ってこい!」
 
 
 
両親にスマホを返し、
できるだけわかりやすい言葉で
どういう設定を、なぜ行ったかを説明した。
 
自分たちが息子に迷惑をかけた
後ろめたさもあってか、
普段使用する分には何も変わらないからか、
特に両親からの反対意見はなかった。
 
 
 
   「おぉ、これでなんかあっても大丈夫やな」
 
 
 
 「なんかあったらアカンねん。
  あくまで保険やからな。気をつけや」
 
 
 
   「わかったがな」
 
 
 
 「あとは、明日起きてからやるわ」
 
 
 
平日、仕事が終わってから移動し、
そこからスマホ2台の設定作業。
夜も遅くなり、僕も疲れていたので、
その夜はそこまでにしておいた。
 
応急処置としては
スマホの設定だけで十分だったけど、
今後を見据えて、
僕にはもう一つやっておきたいことがあった。
 
 
 
翌朝。
 
遅めに起きると、
えらく立派な朝食が待っていた。
まぁ、出張サポート代としては当然か。
 
その時、玄関のインターホンが鳴った。
 
 
 
   「なんや? 宅急便か?
    お母さん、何か頼んだか?」
 
 
 
  「頼んでへんで」
 
 
 
 「俺が頼んだから、
  とりあえず受け取っておいて。
  飯食ったらあとで設定するから」
 
 
 
両親は、ヤマト運輸が運んできた
不思議な正方形の商品箱を、
まるで未確認生物でも見るような
いぶかしげな眼差しで眺めていた。
 
 
 
   「なんや…、これ?」
 
 
 
  「…なんかの機械、かな?」
 
 
 
 「それは、スマートスピーカー。
  型落ちが安かったから買っておいた」
 
 
 
Amazon Echo Dot、
アレクサと言った方が
わかりやすいかもしれない。
 
たまたま安売りしていたこともあるけど、
僕は応急処置だけでなく、
今後のことも想定した何かを残して帰りたかった。
 
親はこれから確実に老いる。
スマホは色々設定したものの、
いずれ手が不自由になれば
スマホすら使えなくなるかもしれない。
 
そういう時が来た時、
見守りや補助に不可欠なのは
音声だけで動かせるスマート家電だ。
 
それなら、一日でも早めに
親しませておこうと考えた。
 
 
 
 「よし、設定完了。
  コイツの名前はアレクサな」
 
 
 
  「アク、レサ?」
 
 
 
 「アレクサ。ちょっと見ておいて。
  アレクサ!今日の天気は?」
 
 
 
    「今日は晴れ、気温は19℃です」
 
 
 
   「おぉーー!」
 
 
 
  「あらら、しゃべったわ!」
 
 
 
初めての経験に、
感嘆の声をあげる両親。
それから何度か例を見せた。
 
 
 
 「試しになんか言ってみ」
 
 
 
  「はいはいはい!私やりたい!
   アレクサ、太極拳の尺八の曲でな…」
 
 
 
 「いやオカン、
  それはいきなり難易度が高すぎや。
  アレクサさん、困ってはるがな。
  もう少し普通の曲なら流れるから」
 
 
 
そこからは、クリスマスに
おもちゃを買ってもらった子どものように、
二人であれこれ練習をしていた。
 
ある程度慣れたのを見届けてから、
僕は昼前に実家を後にした。
 
短い滞在だったけど、実家の環境を
5年分ぐらいは進められた気がする。
 
ちなみに、スマートスピーカーは
僕のアカウントで登録しているから、
設定はすべて僕のスマホアプリから遠隔でできる。
 
さっき見てみたら。
都はるみの曲が流れているようだった。
 
楽しんでいるなら、まずは成功だ。
しばらく様子を見て、年末あたりにでも
またカスタマイズしようと思う。
 
それはまた、別のおはなしということで。