No.3361 我が家版 IT革命アゲイン 〜両親 vs タブレット端末~

両親がケータイを覚え、パソコンを覚え、
我が家版IT革命が始まって約10年。
 
今では実家のインターネット回線も光に変わり、
いつのまにかWi-Fiまで飛んでいて、
茶の間にはデジタルフォトフレームまである。
 
昨今の技術の進化もさることながら、
我が親も随分と進化したものだ。
 
この間の日曜日、
そんな親からメールで連絡があった。
孫娘の卒園写真をケータイに送ってやった直後のことだった。
(以下、原文ママ)
 
 
 卒園おめでとう!
 そちらのタブレットのアドレスを教えて下さい。
 こちらも昨日、購入しました。
 只今、練習中です。
 
 
何っ? タブレット!?
まさか、今さらタブレット端末を買ったのか?
 
これだから金に余裕のある団塊世代は怖い。
光やWi-Fiの時もそうだったけど、
家電量販店の兄ちゃんの口車に乗せられて
「なんとなく」で買ってしまうのだ。
 
半ばため息をつきながら、
実家のオカンに電話をした。
 
 
「もしもし、」
 
 
   「もしもし♪ 買ってん♪」
 
 
「なんでまた今さらタブレット端末を買ったんよ?」
 
 
   「パソコンを立ち上げるの面倒くさいし、
    あったら便利かな~と思って♪」
 
 
この言葉を聞いた僕には
オカンを責めることができなかった。
 
なぜなら今年の正月、
孫の写真を見せるために
実家にタブレット端末を持ち帰り、
親に便利さを説明したのは僕自身だったからだ。
 
思えば、あの時から
両親の食いつきぶりはすごかった。
まさか本当に買うとは思っていなかったけど、
責任の一端は、親の目の前に
ニンジンをぶら下げてしまった僕にある。
 
 
「わかった…。
 ほんで、機種は何を買ったんよ?」
 
 
   「タブレット端末や♪」
 
 
「いや、そうでなくて…、i-Padか?」
 
 
   「i-Padじゃない、と店員さんが言ってた」
 
 
「じゃあ、Kindleか?」
 
 
   「ちょっと待って。
    お父さんが『電話替われ!』って言ってるから」
 
 
出た…。最悪のパターン。
 
機械音痴なくせに
一家の主としてのプライドだけで話す
親父が登場すると、
毎回話が余計にややこしくなる。
 
 
   「もしもしワシや。何を聞きたいんや?」
 
 
「いや、何の機種を買ったのか聞いてるだけやって」
 
 
   「タブレットや」
 
 
「いや、そうじゃなくてよ…。
 機種、端末の種類は?」
 
 
   「“Gメール”や」
 
 
息子の質問にやたらと身構えて
ファイティングポーズを取っている親父に、
何を言っても無駄だった。
 
その後も
「エエから、お前の“タブレットのアドレス”を教えろ」
とか意味不明な注文が飛んできたが、
これまでの経験を踏まえて華麗にスルー。
 
なんとか親のgメールアドレスを聞き出してから
電話を切り、サンプルの写真を送ってやった。
 
gメールだから当然
パソコンでもケータイでも見れるんだけど、
おそらく親は買ったばかりのタブレット端末で
それを見たのだろう。
数分後、歓喜のメールだけが返ってきた。
 
ったく、
タブレット端末なんかより
先にスマホを買えばいいのに。
 
なんとなく先が思いやられるけど、
まぁ、老後のオモチャになっているなら
それもありか。
 
次に実家に帰った時、
どのくらい進化しているかが
少し楽しみでもある。
 
リビングのインテリアになっていないことを、
ただただ祈る。