No.1199 我が家版 IT革命 〜両親が“ケータイ”を購入した日〜

日曜日。大事件が起きた。
 
夕方頃、自宅に戻ると1枚のFAXが。
オカンからだ。
 
 
 
   「お待たせしました。
    ついに、携帯電話を買いました」
 
 
 
なにっ!? マジで?
 
他の家ではどうかは知らないが、
我が実家ではIT化が非常に遅れており、
これまで携帯電話もパソコンもなかった。
 
その両親が、ついに携帯電話を…。
これは我が家の歴史をくつがえす大事件、
遅れてやってきた「IT革命」だ。
 
FAXに目を通すと、オヤジとオカンそれぞれの
携帯電話番号、メールアドレスが。
 
 
 
 「うわっ、マジやん」
 
 
 
どこか半信半疑だった僕も、
それを見た瞬間、現実だと気づいた。
とりあえず、オカンの携帯電話に初めてかけてやる。
 
 
 
   「(トゥルルルル、トゥルルルル)はい、もしもし」
 
 
 
うれしそうなオカンの声。
まるでサンタにプレゼントをもらった子どものようだ。
 
 
 
 「ホンマに買ったんやな」
 
 
 
   「そうやで。メールアドレスもあるからね。
    今、一生懸命打ち方を勉強してるねん」
 
 
 
電話をしながらFAXに書かれたメールアドレスをよく見ると、
オヤジのアドレスは「○△◇□-kyojin@…」、
オカンのアドレスは「△◇□○-taikyokuken@…」。
 
「巨人」と「太極拳」って…。
親たちよ、誰に習ったかは知らないが、
自分の好きな言葉を入れればいいってもんじゃないぞ…。
 
とりあえず電話を切って、
両親のアドレス宛にテストメールを送ってやることに。
 
30年生きてきて
こんな風に親に言葉を送るのは初めてで、
少し新鮮な感じがした。
 
20分後、まずはオカンからメールで返信が。
(以下、原文のママを引用)
 
 
 >アドレス入力しました.又何かあれば送信して下さい
 
 
これを打つのに20分かかったんかー。
これから頑張って練習してもらわなな。
 
そこから遅れること1時間後、
今度はオヤジからメールで返信が。
文字を見た途端、目を疑った。
 
 
 >元気でやっていますか゜ 父より
 
 
「か」に「゜」!?
なんて読むんだ?
というか、どうやって打ったんだ!?
 
オヤジが書くメールを読むことなど、
もちろん生まれて初めてだったが、
ある意味で衝撃のデビューメールだった。
 
「か」の横に「゜」なんて、僕らでは想像もできない。
いや、
「息子よ、固定概念に縛られるな」という暗黙のメッセージなのか?
親のITポテンシャルは計り知れんなー。
 
と、その数分後、
今度は神奈川に住む姉キからメールが。
 
 
 >注意報発令!実家の父母がついに携帯持ったらしい。喧嘩しながらメールうってきます!
 
 
そうか。姉の方にはもう被害が出たか…。
 
どちらもメカは苦手なくせに、
オヤジは知ったかぶりでオカンに教えようとして、
夫婦ゲンカが起こる。
親が携帯を持ったら、こうなることはわかっていたのだ。
 
その数分後、オカンからメールが。
 
 
 >メ-ルアドレスと電話番号はセットと思い込んでいました。
 >お父さんに言うとアホかー常識じゃ!別に決まっとる。
 >ここで優太郎語録を1つ。
 >お父さんとお母さんは、幼虫で生まれて人間になったの??爆笑 以上

 
 
優太郎とは、姉キの子ども(つまり両親の孫)。
デレデレな様子を伝えるそのメールに、
僕はどう返信すべきか悩んだ。
 
というか、これからこんなデレデレメールが
毎日届くんだろうか。嗚呼、恐ろしい…。