No.7 幻のカクテル “impossible”

昔バーテンをやっていた事もあって、
カクテルがとにかく好きだ。
 
好きなカクテルは色々あるけど、
その中でも特別に好きなモノがある。
 
ちょうど去年の今頃、
ツレと3人でアメリカ大陸を横断した。
ロス〜N.Y.まで。
 
もちろんとっさに思い立って出来る旅ではないので、
前年の11月ぐらいからよく部屋に集まって
アメリカの地図を広げて計画を練った。
 
金のなかった俺達は、
金と時間とアメリカ大陸の広さと相談しながら
いつも途方に暮れたりしてた。
 
だって、「アメリカ横断」と単純に口に出して言っても
そのスケールは日本横断の比じゃない。
 
その日も俺達は、
一人のツレの家でいつもの様に考えに詰まっていた。
 
 
 
 「何か飲みながら考えようや」
 
 
 
俺は言った。
 
気分転換をしようと、そう言ったのはいいけど
ツレの家の冷蔵庫にあったのは、
ウォッカ、カルピス、オロナミンC…。
 
 
 
 「え〜い。混ぜたれ!」
 
 
 
バーテンやってた時の何となくの勘で分量を決めて
俺は半ばヤケになって、そ
の場で特製カクテルを作った。
 
 
 
   「誰が飲むねん。そんなもん。」
 
 
 
ツレは笑ってた。(まあ、俺も笑ってたけど)
 
結局俺が飲むことになったので、
俺はそのカクテルに口をつけた。 
…?、!
 
 
 
 「うまいぞオイ!」
 
 
 
俺の言葉に続いて口にしたツレも
 
 
 
  「ホンマや!」
 
 
 
   「マジで!?」
 
 
 
とそのウマさに驚いた。
 
 
 
 「やれば出来るもんやなー!」
 
 
 
俺達はそのカクテルを
“impossible”と名付けた。
 
そしてそのカクテルに勇気づけられ、
計画は順調に進み、
俺達は見事大陸横断を成し遂げた。
 
ロスで片目を入れて、
N.Y.でもう片方の目を入れたダルマに、
最後にみんなでサインをした。
 
その時に書いた言葉。
 
 
 Impossible become possible.
 
 
この世には色んな酒があるけれど、
あれほどウマイと思った酒はない。
きっとそれが、友人との思いが詰まってる酒だからだろう。
 
カクテルには一つ一つにドラマが込められていて、
自分でそのドラマを詰める事も出来る。
 
だから、カクテルが大好きだ。うん。