No.33 海は海色

「海の色は何色だ」と聞かれたら、
「海色」だと答える。

子供の頃から海の近くに住んでいた。

小学2年生の頃だっただろうか。
ある日学校が終わった後、海を描きたくなって
「絵の具セット」を持って海辺に行った。

筆を握って、海を見つめて、海を描こうと色を作る。
青色をパレットの上で作る。? 何か違う。
緑色を少し足してみる。違う。

どうしても海の色が作れないまま、気がつけば
パレットの色は真っ黒になっていて、
遂には僕は泣きだしていた。

泣きじゃくっている僕の気持ちとは裏腹に
波は一定のリズムで波音をたてる。
何か潮のいい香りがしたのを今でも覚えている。

目を開けて、涙でにじんだ海を目にすると
言葉で言い表せないような色がキラキラ光っていた。

いつの間にか僕は、泣くことも忘れて
ぼーっと海を眺めていた。

その時思った。
「海は海色なんだ」って。

この世には言い表せられないものがある。
絶対。

だからこそ、生きている事は楽しい。
そんな気がする。

何でもカテゴリーに分けようとすると
きっと楽しくなくなる。そんな気もする。