No.546 拝啓 郵便ポスト様
届けばいいのにな。
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拝啓 郵便ポスト様
電子メ-ルとやらが一般的になった昨今、
手紙の数も随分と減ったことと思いますが、
あなた様はいかがお過ごしでしょうか。
50円切手を貼って差し出すだけで、良心的にも
日本全国に私の筆跡を届けてくれるあなた。
時々あなたを見ていると、その口に手を入れたくなります。
きっとその口の向こうには、無限の世界が広がっていて、
「私をどこか違う世界に連れていってくれるのでは…」などと思い描いたりして。
先日、家の前にあるあなたを見ていて、
子供の頃、「おとうさん、はやくかえってきてね」と書いたメモを
その口に入れたことを思い出しました。
きっとあなたなら、昼間どこにいるか分からない父親に、
私の小さなメッセ-ジを届けてくれる気がしてたのでしょう。
毎日お会いしているようで、長い間ご無沙汰しておりますが、
私もあの頃より1mちかく背が伸びました。
あなたは色も背丈も、昔とお変わりないようですね。
勝手なお願いですが、これからもずっと、
あなたはあなたのままでいて下さい。
私にとっては、子供の頃の話が一緒にできる大切な人ですから。
寒い日が続きますが、どうぞご自愛下さい。失礼します。
敬具
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電子メ-ルじゃ、届かないか。