No.4785 「島唄」という曲

 
沖縄の歌について語る時、
必ず話題に上る曲がある。
THE BOOMの「島唄」である。
 
一気に大ヒットしてから、
もう20年ぐらいになるだろうか。
 
元々BOOMというバンドが好きだったので、
もちろん島唄は知っている。
ただ、最初はその曲のタイトルを聴いて少し驚いた。
「ものすごい挑戦をしたな」と。
 
島唄とは、元々沖縄民謡の総称で、
わかりやすく言えば、
すべての海外楽曲を代表して
「洋楽」という曲名をつけるようなもの。
 
沖縄を代表した「島唄」という曲を、
本土の人間が歌うとは…。
現地の沖縄人の反発は想像にかたくない。
さすがに僕も少し鳥肌が立った。
 
実際、BOOMの「島唄」にまつわる映画の中で、
沖縄民謡の大御所、
古謝美佐子がこう言っていた。
 
 
 「島唄というのは、先祖から代々
  沖縄の人が歌い継いできた大切なもの。
  それを曲名にするなんて…、
  私には怖くて歌えませんけどね」
 
 
本土への皮肉もあるのか、
沖縄を歌ってきた大御所だからこそもプライドか。
そのインタビュー映像を観て、さらにブルッとした。
 
でも、結果的にBOOMの「島唄」は
沖縄の人にも受け入れられ、
今や沖縄を代表する歌として
逆輸入で現地の人々も歌っている。
 
長い年月をかけて数々の批判を沈下させ、
うちなんちゅーを納得させたのは、
宮沢さんの本気の沖縄愛があってのこと。
 
最近では、沖縄三味線に使う木の
植栽プロジェクトまでやっていて、
宮沢さんの見せた覚悟には敬意しかない。
そこまでやったからこそ、
沖縄の人々が認めたんだろう。
 
石垣島出身のバンド・BEGINも言ってた。
 
 
 「最初は、宮古島かどこかの人が
  歌ってると思ってたから、
  本土の人が作ったと聞いて驚いた。
  でも、あの曲のおかげで
  沖縄の曲が日本に知れ渡った。
  『あ、やっていいんだ』と思った」
 
 
BEGINがデビューした当時、
まだ沖縄の音楽など誰も知らなかった。
本人たちの言葉を借りれば、
「とりあえず同じスタートラインに立つために
まずはブルースを始めた」そうだ。
 
その証拠に、
彼らの「恋しくて」というデビュー曲は
すべて標準語のブルースだ。
 
ただ、沖縄人としてどこかモヤモヤした気持ちを
抱えながら歌っていたところに、
「島唄」が流れてきたらしい。
 
「沖縄の音楽をやっていいんだ」と思えた瞬間、
彼らの前に光が見えたと言う。
「島唄」という曲は、僕らが知らない場所でも
ミュージシャンに大きな影響を与えていたのだ。
 
実は「島唄」が出た当時、
僕は少し抵抗があって、
しばらくの間あまり聴かなかった。
 
ロックバンドのBOOMが見せた
方向転換に対する戸惑いもあったし、
沖縄の曲がミーハー的に流行っていくことに対する
抵抗もあった。
 
でも、今はどちらもない。
だから、たまに聴くと心に沁みる。
ええ歌やなぁ。
 
自分は宮沢さんのような覚悟を持てるだろうか。
何を作れば沖縄から認められるだろう。
最近、そんなことばかり考えている。