No.678 かわいい5円玉

 「5円玉がはいってもエエかいのぉ?」

タバコ屋のおばあちゃんは、しわしわの手を差し出し、
10円玉4枚と、5円玉2枚のお釣を僕に手渡した。

硬貨からかすかに感じる、
おばあちゃんの手のぬくもり。
まぎれもない、人の温かさ。

秋という季節のせいだろうか。
乾いた胸が、少しきゅんと鳴いた。
数日前の出来事である。

昨日の「5円玉キャッチ」を見ていて、
改めて思ったことがある。

お金って、なんだか欲深いイメージしかないけれど、
実は、ふれあいが少なくなりがちなこの世の中で、
一番、人と人との間のふれあいを
演出しているものじゃないだろうか、って。

もちろん、デジタル社会の到来で、
お金は画面上の数値として扱われるようにもなった。

けれど、やっぱり財布を持ち歩かない人は
ほとんどいない。
現実的に、毎日毎日、
お金は人と人との間を行き来してるのだ。

「媒体」という言葉がある。
辞書に載っている意味で言えば、「なかだちをするもの」。

お金とは媒体である。
もっと限定して言うならば、人から人へ、
価値とぬくもりを運ぶ媒体だ。

財布の中をのぞいてごらん。
ごちゃごちゃしている硬貨の集まり。
それは、あなたのものであって、あなたのものではない。

いつの間にかあなたのもとに舞いこんできて、
そしてまた、いつしか誰かのもとへと、
あなたのぬくもりを運ぶ、かわいい子供たちである。