No.697 クリスマスプレゼントは朝届く

昨日のイブは、決して幸せじゃない…はずだった。

好きな人のそばにいられず、急に仕事も入り、
なんだかせわしなくドタバタ。

せめてサンタに会いたくてピザをとったら、
お兄ちゃんがフツーの服装でやってきて、
無愛想に

 
 「…2100円になります」

とポツリ。

隣に座っている女のコが帰る間際に、

  「今日、おとめ座最下位でしたよ♪」

と言ってくれたあの言葉、
夜の11時に言われてもなぁ~と思っているあいだに、
いつのまにか電車もなくなった。

   「あぁ、なんてイブだ。そうだ、俺は仏教徒だ。」

ワケの分からない理由を口走り、
レクイエムのように聞こえてくるFM802の
クリスマスソングに胸をうたれていると、
子どものためにサンタさんになりに
一時帰宅していた先輩が戻ってきた。

 「ただいま~」

   「大変っすね。今年のサンタのプレゼントは?」

 「江ノ電セット。」

その後、なんだかんだで明け方までお仕事。
「日本は俺のようなサラリーマンが支えているんだ」とか、
あいかわらず意味のわからないことを口走りながら。

うっすらと明けはじめた空を横目に、
深く腰掛けたタクシーの後部座席。

あ~ぁ。よく昔オカンに
「眠らないと、サンタさん来ないよっ!」って、
睡眠薬を飲まされたっけな~。

明け方のクリスマスの街は静かだった。
歩いていたのは、ネコぐらい。

たまに赤い服にデッカイ白袋をかついだ
ヒゲの男の人を見かけたけど、
きっとあれは泥棒だったんだろう。

家に帰ってシャワーを浴びると、
眠気がなくなって眠れなくなった。

布団に入って、ぶつぶつ呟く。

   「サンタ来ねーかな~、サンタ、サンタ…」

その時、ふと思いだした。
サンタを待っていた頃の気持ちを。

会いたくて、でも会っちゃいけない気がして、
眠らなくちゃいけないんだけど、眠れない。
そんな心が一瞬、よみがえった。

今年のイブは、幸せじゃないはずだった。
でも、まさか自分から
プレゼントをもらえるなんて思ってなかったから、
なんだかすごく嬉しかった。

目覚めると、今日のおとめ座の運勢は2位だった。
ラッキーコメントは次のとおり。

  2位 おとめ座
      今日は思わぬプレゼントがもらえるかも。