No.1024〜1026 Stand by meごっこ 〜旧JR福知山線 廃線跡探検〜

●今日のおはなし No.1024●

   「プラっと秋めきたくない?」

そんなK.Sさんの言葉に誘われ、
この日曜日、K.SさんとY.Nさんと3人で、
ハイキングに行った。

めざしたコースは、
昭和61年に廃線になった旧JR福知山線の跡地。
宝塚の奥にある生瀬(なまぜ)から武田尾(たけだお)までの
6kmを結ぶ路線跡地を「スタンド・バイ・ミ−」のように
歩こうという計画だ。

生瀬のあたりに車を止め、まずは近くにある
「コープmini」で必要なものを買いそろえる。
懐中電灯の電池、お菓子、バナナ、おにぎり、飲み物…etc.。

 「おっ、これエエやん」

役に立つかどうかは分からないが、
方位磁石のついた
「コンパスチョコ」というお菓子もついでに買った。

生瀬をスタートし、
K.Sさんがホームページからプリントアウトしてきた
地図を頼りに、旧JR福知山線に入るための「入口」を探す。

しかし歩いて5分後、
いきなり道が分からず迷ってしまった。

 「あれ? こっちかな?」

まだ住宅地も脱出できず右往左往する僕たち。
すると、どこからか神の声が。

   「おぉーい、廃線に行きはるんかぁ?」

振り返れば、近所のおじさんが
手にリーフレットのような資料をもって
僕たちを追いかけてきていた。

K.Sさんに一生懸命行き道を説明してくれるおじさん。

   「川沿いにずーっと行ったら赤いポストがあるから、
    そこが入り口やで。これ持っていき」

詳しい地図の書いてある紙を受け取り、
お礼を言ってから再スタートした。

 「赤いポスト、赤いポスト…、見当たらんなー」

数百メートル歩いても、
おじさんの言う赤いポストは見当たらない。

 「こんなことじゃ、
  もう1回おっちゃんが飛んでくるんとちゃう」

と笑っていたその時、

 「ア、あった!」

めちゃめちゃ小さいけど、
まぎれもなく赤いポストだ。

その近くに入口らしきものを発見。
全部は覚えていないけど、
フェンスに掲げた看板にはこんな感じのことが書いてあった。

   ここは廃線跡であってハイキングコースではありません。
   だから入ったらアカンで。いや、マジで

 「なるほど。よっしゃ、行こかー」

そう言って、僕らはその脇にあった
フェンスの中の草むらへと足を進めた。

 

●今日のおはなし No.1025●

(昨日の続き)

 「うわっ、すごいところやな」

廃線跡に入ると、おいしげった雑草がたくさん。
少し濡れた地面には、年月が経って硬くなったレールの枕木が
まるで道案内をするかのように列をなして並んでいた。

さっきまでのアスファルトの道が、
一瞬にして懐かしく感じる。

しばらく歩くと、右手に川が見えてきた。

 「おー、すげぇ」

簡単な手すりしかない断崖からのぞく渓流は
スリルも迫力も満点。
これぞ「ハイキングコースじゃない」ルートの醍醐味だ。

また少し歩くと、今度は小さな橋が目の前に。
そばにある看板にはこう書いてあった。

    橋りょう上 歩行禁止!

この橋渡るべからずときた。
たしかに、よく見ると橋の真下は川。
橋の真ん中には少しスペースがあり、
決して安全とは言えない。

 「歩行禁止って言われてもなー。行くやろ?」

慎重に橋を渡り、また足を進める僕たち。

枕木を踏んで一歩一歩歩いていると、
その間隔がビミョーに違うことに気づき、
昭和の時代、
その場所に線路を敷いた人のぬくもりを感じた。

しばらく歩いて休憩をし、枕木を歩く。
すると、目の前に大きな影が見えてきた。

 「?  トンネルや!」

目の前に広がる大きな空洞。
先のほうは真っ暗で何も見えない。

少しドキドキしてきた僕たちは、
懐中電灯のスイッチを入れ、
川口浩になった気分で暗闇の中へと足を進めることにした。

 

●今日のおはなし No.1026●

(昨日の続き)

トンネルの中は、本当に真っ暗だった。
懐中電灯で照らしても、足下ぐらいしか見えない。

かすかにどこからか滴り落ちてくる
水の音だけが聞こえてきて、無気味な感じがした。

懐中電灯で壁を照らすと、
何やら色々な文字や記号が書いてあった。
意味は分からないけど、その昔、
きっと誰かが何かのために書き記したものなんだろう。

なんとなく、探検家の気分になってきて
暗闇の中で地図を広げてみる。
うーん、うーん、見えない…。

トンネルの出口に差し掛かった時、
昼間の光がとても綺麗に見えた。
さっきまでは意識もしない当たり前の
光だったのに、不思議だ。

その後、トンネルをいくつか抜けると、
今度は目の前に鉄橋が現れた。
さっきまでの橋とはまた違い、
下は激流で高さもあり、足下も悪くかなりスリル満点。

橋を渡り終え、また休憩。

少し高くなった秋空の下、
K.Sさんの持参したみかんをたいらげながら、
川を眺めていると、頭の中がからっぽになった。

ゴールの武田尾に着いたら4時になっていた。
2時間半ほど歩いていた感覚なんてまるでない。
たぶん、それほど夢中になっていたんだろう。

復路の武田尾から生瀬まではJRに乗って帰った。
電車に乗ればわずか2駅、5分ほど。

これまで歩いてきた道のりが
車窓の向こうに早送りされるのを眺めていると、
なんだか普段電車に乗って楽をしているのが
とても損をしている気分になった。

   「まだまだ私たちの知らん場所があるねんなー」

K.Sさんの一言に、Y.Nさんと深くうなずく。

たまにはこんな遊びもいいな。
この夜、3人で飯を食いながら「ハイキング部」を
結成することになったのは言うまでもない。

部長のK.Sさんいわく、
次のテーマは「岩山」だそうだ。
どうなるかは分からないけど、楽しみだ。