No.55 田舎者の父、海を渡る。

僕が高校生ぐらいの時に、
親父が

 「会社の新製品のために、アメリカを見学する」

と言って、2週間弱アメリカに行く事になった。

親父にとっては初めての海外。
ましてや、ずっと関西に住んできた親父が
関西弁はともかく英語なんて。

高卒で英語もあまり勉強してなかった親父は、
いく直前から「3日で話せる英会話」やら
「これだけ覚えれば大丈夫」といった本を買いあさり。

しかし、どうやらそれさえも親父の脳には入らなかったらしく、

 「英語なんて気合いや」

と、元阪神タイガースの川藤のような言葉を残して
日本を発った。

そして約2週間後。
何故かヤンキ-スの帽子をかぶって、親父が帰ってきた。
帰ってきてまず第一声、

 「肉が、ぶ厚かった」

そんな親父が今、海外初めてのおかんを連れて
シンガポ-ルに行っている。

まだちょっとドキドキしてるくせに
知ったかぶりで外国について説明している
親父の顔が目に浮かぶ。