No.3542 「独り言」という罪

手土産を持って、電車に揺られている。

昼間の電車はお出かけするおばちゃんが多くて、
わりとガヤガヤしているんだな。
あのおじさんも、
今の時間だったら許されたんだろうか。。。
 
 
今朝、電車に乗っていたら、
少し離れた場所に座っていたおじさんが
ずっと何かつぶやいていた。

最近はスマホにイヤホンをして
通話をする人も増えたから、
それ系の人なのかな?と思ったけど、
見たところ、缶コーヒー以外所持品はない。

どうやら、ただの
「独り言ずっと言っちゃう系」の人だった。

日本人というのは、こういう時の
危機察知能力には長けているもので、
そのおじさんの周りには誰も近寄らない。

でもたしかに、
静かな車両の中に響く独り言が
みんな気にはなっている様子でね。

ある人は顔をしかめたり、
またある人は睨んだりしていたので、
どうしたもんかな~と思って考えた。

だって、
ちょっと怪しげな風貌はさておき、
そのおじさんが何をしたわけでもない。

迷惑になるほどの大声で
わめき叫んでいるわけでもないし、
そこら辺のおばちゃん同士の話し声や
赤ん坊の声の方がずっと大音量だったしね。
 
 
 
 「たしかに気にはなるけど、
  この人の独り言は何の罪になるんだろう?」
 
 
 
そんなことを考え続けた。

ゲラゲラ笑っている乗客の話し声よりも
ずっと小さな声で電話している人も、
なぜマナー違反なんだろう、と。

よく外国人が
「日本の電車は静かすぎて不気味だ」
と言うらしいけど、もしかしたら、
おかしいのは僕らのような気もする。
 
迷惑や不快の基準が、
あまりに自己チューになっているような。
静かであることが美という感覚は
たしかに日本人の自分にはあるんだけど、
それを押しつけてしまっているような。

色んな価値観があるだろうし、
色んなことを受け入れていかなきゃな。
もう少しだけ寛容に。
 
最近の報道を見ていると、
多数派が少数派に
価値観を押しつけているようで怖い。

独り言のおじさん、
外見がキモいだけで
よく聴くとつぶやいている内容は
悩みに対する自問自答に近かった。

話しかけてあげた方が良かったのかもな。
そうすればただの会話になるから、
周りからも許されたのかもしれない。
まぁ、それも変な気がするけれど。

スルーして電車を降りてしまった自分を、
少しだけ後悔している。