No.2141 一休さんならどう考える?

垂水の町中を歩いていたら
歩道のそばに学校があってね。

門の横に大きな字でこう書いてあった。

  許可なく立ち入ることを禁ず

よく見掛ける言葉なので
「ふ〜ん」と見過ごすつもりだったんだけど、
よくよく考えたらやたら気になってきた。

「ちょっと待てよ…、おかしくないか?
 入るのには学校関係者の許可がいるとしても、
 その関係者に会うためには
 中に入らなければならない。
 インターホンもないし…、
 無断で入ったら捕まるし…、
 これじゃあ誰も入れないじゃないか!」

無断侵入のみを禁じているようで、
実は一切シャットアウト。
言葉のマジックとはこういうことを言うんだろう。

気のせいか、
学校はがら〜んとして人の気配がなかった。

「くそ…、どうやったら
 この学校に入れてもらえるんだ…」

校門前に立ちすくみ、
しばらく学校をにらんでいた僕は
きっと周りから見れば
アブないサラリーマンだっただろう。

学校には一切用はなかったけれど、
なんとかして入らなくてはいけないような気がした。

「こんな時、一休さんならどうするだろう?
 …、! そうか!!」
 “あのはしわたるべからず”の立て札を見て
 端ではなく真ん中を歩いた一休さんのように、
 “立ち入ることを禁ず”と書かれているなら
 “しゃがんで”侵入すればいいじゃないか!」

我ながら天才だと思った。

そして、僕はゆっくりと
その場にしゃがみこみ…かけたところで
警備員が巡回に来たので、
何食わね顔で
颯爽と町を歩き続けた。