No.3679 東アジアのご近所付き合い

昔、僕の隣の家には、
少し口うるさい女の子が住んでいて。
 
僕のことが嫌いなのか、何なのか、
昔から事あるごとに
僕のやることに難癖をつけては噛みついてきた。
 
仲のいい時期もあったんだけど、
あまりに彼女が嫌がらせをするから、
いつしか疎遠になっていた。
 
そのまた隣の家には
やんちゃな男の子が住んでいて。
 
昔はそうでもなかったんだけど、
お父さんが亡くなって家を継いだ途端、
好き放題にやり始めた。
 
その男の子は「ロケット花火」が趣味で、
女の子やうちの家の方に向けて花火を飛ばしては
僕らが怖がる様子を見てあざ笑っていた。
 
花火はだいたい家の間の道路に落ちていたけど、
たまにうちの庭に落ちることもあった。
今思えば、火事にならなくて本当に良かったと思う。
 
そんな近所迷惑に耐えられなくて、
僕は男の子の悪行や、女の子の嫌がらせを
お父さんに言いつけた。
 
それを聞いたお父さんは
いつも腹を立てていたけれど、
結局何もしないことを僕は知っていた。
 
お父さんはいつも、
「抗議してやる!」と口では言うんだ。
 
でも、結局自分では何もせず、
毎回毎回地元では権力のある自治会長さんのところに
チクリに行くだけだったんだ。
僕は、お父さんのそんな気弱い行動が
昔から少し嫌だった。
 
お父さんが頼っていた自治会長さんの家は、
とても大きくて、地元では有名だった。
 
僕の家からは随分遠い場所にあったんだけど、
何かあればすぐに飛んできてくれて、
ケンカも強く、味方にすれば心強い存在だった。
 
ただ、その分、敵も多くて。
中には、密かに自治会長のポストを狙っている
プーさんにそっくりなオジサンもいた。
 
実質、自治会ナンバー2であるそのオジサンは
ロケット花火が好きな男の子の隣に住んでいて、
昔からうちのお父さんとは仲が悪かった。
 
お父さんが直接男の子の家に文句を言えなかったのは、
そのオジサンが裏にいたせいもあったんだと思う。
 
そのナンバー2オジサンの家はとても大きくて、
僕の家の何倍もある広い敷地に
ものすごくたくさんの子どもが住んでいた。
 
狭くなってきたからか、
単にしつけがされていなかったからか、
たまに数人の子どもが勝手にうちの庭に入ってきて、
野菜や果物を荒らしていった。
 
「ここは僕の家の庭だぞ!勝手に入るなよ」
と注意したら、
「昔はうちの庭だったんだ! うちのものだ!」
と逆ギレされた。僕にはよく意味がわからなかった。
 
そんな小競り合いを見ても、
お父さんはやっぱり何も言わなかった。
自治会長に電話でチクるだけだった。
 
こんな風に、僕の近所には
ややこしい人たちがたくさんいる。
 
でも、僕はこれからも
この街で暮らしていかなければいけない。
お父さんは黙ったまま。どうすればいいんだろう?
 
今日も朝から
うちの家の上をロケット花火が飛んだ。
お父さんは「逃げろ」と言った。
僕はどこに逃げればいいかわからず、パニックになった。
 
そうこうしているうちに、花火はどこかに落ちた。
 
今、たまたま生きているけど、
僕は本当に怖くなった。