No.3947 モノを買うなら人で買う

スーツ、シャツ、ネクタイ、カバン…etc.

仕事をする男のアイテムとは
それなりにお金がかかるもので、
中でも意外と出費が痛いのが「靴」である。

着る物なら他にいくつかストックがあるから
しばらく代用もできるけど、
革靴なんてたいていは一足。

もしもある日、穴が空こうものなら、
その時期にお金があるなし関係なく
すぐに買わなければいけない。

僕がこの間まで履いていた革靴も
いよいよ革がくたびれてきて、
この間、ついに小さな穴が空いてしまった。

雨の日も晴れの日も、ほぼ履いて
それなりに毎日歩いているからね。
ある意味消耗品だから、こればかりは仕方ない。

と言いつつ、
しばらく風邪を引いていたので
買いに行くのが面倒くさくて。。。

ようやく先週金曜の夜、
仕事帰りに梅田の百貨店に買いに行った。

平日夜の百貨店なんて
普段はあまり行かないけれど、
金曜ということもあってか、それなりに客はいた。

ただ、やっぱり女性がほとんどで
紳士服・靴フロアは特にがらーんとしていた。

そりゃそうだ。金曜の夜なんて、
普通のサラリーマンなら居酒屋で飲んでいる時間。
わざわざ靴を買いに来る奴なんて少ないだろう。

広いフロアにお客は僕だけで、ほぼ貸切状態。
店員さんの視線を一心に集めながら、
夜の革靴ショッピングを楽しんだ。

僕はこだわりがあるものにはこだわるけれど、
そうでないものは
わりとテキトーに選んでしまう癖がある。

どちらかというと革靴は後者で、今までも
店員さんと話したフィーリングだけで決めてきた。
「ここで会ったのも何かの縁だから、この店員さんに従おう」と。

以前、革靴を買った時は
やたらとマニアックに靴を愛する兄ちゃんだった。
うんちくがすごくて、
「わかったわかった、兄ちゃんに任すよ」と根負けして買った感じ。

今回、百貨店で出会ったのは40代後半ぐらいの女性。
見た目はおとなしくしてるけど、
本音で話したら結構毒舌で面白そうなタイプの人だった。
 
 
 
 「いつもこんなにお客さん少ないんですか?」
 
 
 
   「ぶっちゃけ、みんな隣の百貨店に取られてますわ。
    うちの百貨店、売り方下手やし、なんて誰も来ないでしょ」
 
 
 
そう言って悪い笑みを浮かべると、女性店員は
「本当におすすめできる靴」とやらを出してくれた。
 
 
 
   「あの靴はね、店からは売れと言われるんですけど、
    高いだけやからやめた方がいいです。
    こっちの靴は、デザインも素材もいいのに
    わりとリーズナブルですよ」
 
 
 
もう、こういう話ができる相手であれば
特別僕に断る理由はない。
勧められるがままサイズだけ確認し、すぐに買った。

今日からその靴を履いて出勤しているんだけど、
この靴がいい靴かどうかは
しばらく経ってみないと分からない。
騙されたかもしれないし。

でも、こういう買い方、わりと好きなんだよね。
人との出会いを品にこめる、みたいな。

たぶん、この靴を履き続ける間、
常に僕はあの店員さんの存在を思い出すだろう。
そういうアイテムが増えていくのって、面白い。

家を買った時、車を買った時、
スマホを買った時もそうかな?
だいたい僕は人で買ってきた。

逆を言えば、目の前に欲しいものがあっても
生理的に合わない店員がいたら買わなかったこともある。

やっぱり、売る人って大事だな。
店舗で見てからネットで買う時代だけど、
僕はできればその逆を続けたい。

自分の「人を見る目」が正しいのか、
モノではなく人を買いかぶるゲームを楽しみたいね。