No.649 誉めT

その日の僕は、マクドで一人、
少し早めの昼飯を食べていた。

と、なんだか前方から視線を感じるではないか。

ポテトから顔を上げて前を見ると、
岩城晃一のようなダンディーミドルが
僕のほうをじっと見つめているではないか。

ナイキのランニングシューズにランニングパンツ。
知的な目で、リュックから取り出した
携帯とPDAをあやつるその姿からして、
それなりに地位のある方なのだろう。
しかし、なぜこちらを…?

一瞬目をそらして、
また顔を上げてみる。
…、まだこちらを見てる…。

なんだ?なんなんだ?

まさか、このマクドには“なわばり”があって、
俺が座ってはいけない席に座ってしまったのか?
それとも、俺が昨日散髪に成功したからか?
それとも、俺のことを…。

! 次の瞬間、ダンディーミドルが席を立って
こちらに歩み寄ってきた。
自然と拳に力が入る。

「兄ちゃん、」

「はい」

「そのTシャツいいね~♪」

「は、はぁ」

満面の笑顔で去って行くダンディーミドル。
すれ違う彼のTシャツには、
なぜか「あちゃら」という文字とワニが
大きくプリントされていた。