No.4792 無知は未知

 
「無知の知」とでも言おうか。
 
僕は自分が知らないことだけを知っていて、
何を知らないのかは具体的に知らない。
 
「この世でまだ見たことのない風景がある」
とは思うものの、見たことがないのだから、
それが何かすらわからないのだ。
 
あれは、学生時代に行った北海道ドライブの時だったか。
釧路の上の方で初めて「湿地」というものを見た瞬間、
なんだかとてつもないものに出会った気がした。
 
見映えはそこまで美しくはないけれど、
それまでの人生で知らなかったものに
出会ったことだけはちゃんと分かった。
 
数年後、アメリカ大陸横断の旅をしている時、
メンフィスからニューオリンズに向かう列車の窓から
広大な湿地が見えた。
 
でも、その時はそこまで驚かなかった。
初めてじゃなかったから。
 
さすがはアメリカ、
北海道よりも広大な感じはしたけど、
「ああ、湿地か」という感じで落ち着いて眺められた。
 
 
僕にはまだまだ、知らないものがある。
 
それが何かは分からないし、
もしかしたらすべてを知らずに
一生を終えるかもしれない。
 
まぁ、そういうもんだろう。
死ぬまでにすべての景色、
すべての人間に会うなんて無理な話だから。
 
あとどれだけ知らないものに
出会えるのかはわからないけれど、
急いで知ろうとは思わない。
わざわざ探しまでに行くことはないでしょ。
時の流れに身を任せておけばいいと思う。
 
大切なのは
何か知らないものと会えた時、
素直に感動できる心を保つこと。
 
知らない自分がいるということを
知っておくと、意外とワクワクするもんだ。
 
スマホ検索で正解ばかり探してないでさ、
ガイドブックなしの人生旅を楽しみたいな。