No.1291 亡くしてから涙を流す 馬鹿な僕たち

パンが焼ける香りで目を覚ますと同時に、
ベッドの横で小さく揺れ始めた携帯電話。
その悲しい知らせは、朝、静かに流れてきた。

あれからちょうど1カ月前。
今日という日が来ることなど想像もしていなかった。
それでも、そんな意識の甘さを戒めるように、
非情にも現実は突然訪れる。

こんな現実に直面するたびに、生命の儚さを知り、
惰性のような自分の生活を省みる。
その瞬間は。

いずれまた忘れてしまう。人間はバカだ。

いくら相手の気持ちを推しはかったとしても、
所詮当人の気持ちにはなれない。
同情を超えた何かを、
僕はいつになったら理解することができるんだろう。

3月の風が舞う空の下で、
悲しい知らせは一人、二人と伝わっていった。
だからといって、何も変わらない。
時はもう、戻らない。

天に召されたあなたへ。
胸を痛めることしかできない無力な僕たちを
どうか許してください。