No.1444 右手の指会議

     『右手の指会議』

人さし指 「あー、疲れた…。今日も疲れたよ」

薬指 「お疲れさま。いつもゴメンね。
     あなたばかり、働かせて」

人さし指 「別にええよ。この5人の中じゃ、
       オレが一番器用やからな」

中指 「おいおい、ちょっと待ってよ。
     器用さなら俺も負けてないぞ」

人さし指 「器用? どこがやねん。
       オマエだけで人の財布をスること出来んやろ?
       オマエだけで上手に鼻くそほじれるか?
       細かいパフォーマンスはオレしかできんやろ」

中指 「なんだと!? 俺よりチビなくせに!」

親指 「まぁまぁ二人とも、ケンカはやめなさい。
     じゃんけんでチョキを出す時は、
     いつも仲良く協力しあっているじゃないか。
     もっとお互いを認めあいなさい」

人さし指 「…はい。でもボス、やっぱりオレが
       一番がんばってると思うんですけど」

親指 「人さしよ、誰が一番とかじゃないんだよ。
     たしかに、オマエはいつも活躍してくれている。
     誰が触ったかわからないエレベーターのボタンを押すのも、
     目やにをとるのもオマエに頼ってるもんな。
     ただ、みんなもちゃんと自分の役割を果たしてるんだよ」

人さし指 「いや、ボスががんばっているのはわかりますよ。
       ハサミを使うときも、紙を数える時も、
       ボールペンで書く時もオレに協力してもらってますし。
       でも、中指の野郎…」

親指 「いいか人さし、ボールペンで書くときも
     中指が目立たない下で支えてくれているから
     オマエが器用に動けるんだ。それを忘れちゃいかん」

中指 「そうだよ! わかったかバーカ!」

人さし指 「…。」

小指 「人さし指兄ちゃん、元気出して。
     僕はがんばってるお兄ちゃんのことが好きだよ。」

人さし指 「こっ、小指…」

小指 「僕はあんまり何もできなくて…、
     背も低いからさ、人さし兄ちゃんと握手しようと
     思っても届かないくらい力不足だけど、
     兄ちゃんがいつも忙しそうにしているのを見て、
     カッコいいなぁと思うよ」

薬指 「私もそう思うわ。あなたがいなかったら、
     私たちだけじゃ何もできないから」

中指 「ふん、俺はそうは思わないけどねっ」

親指 「中よ、オマエも本当は人さしに感謝してるんだろ?
     この前も『タバコを挟むのにはアイツが最高のパートナーだ』って
     言ってたじゃないか」

中指 「そっ、それはそうですけど…」

親指 「さぁ、仲直りしなさい」

中指 「…もぅ、わかりましたよ。
     人さし、すまんな。俺が悪かった」

人さし指 「いや、こちらこそ。
       オマエの苦労をわかってなくてゴメン」

親指 「ハッハッハッ、よしよし、それでいい。
     次の時代はオマエらに担ってもらわなくちゃいけないからな」

人さし指 「何を言ってるんですかボス、
       まだまだボスにはがんばってもらわなきゃ。
       携帯メールの早打ちなんて、僕らじゃできないっすよ」

親指 「人さし…、ありがとう」

小指 「わーい。みんなこれからもずっと一緒だね!」

こうして、僕の右手の指たちは
今日もみんなで一生懸命働いている。