『田舎者のブルース』
東京city。
なんなんだ、この街は。
地上にも人があふれているが、
地下にはもっと人がいる。
所狭しと立ち並ぶ高層ビル。
頭上だけじゃ飽きたらず、
まだ足下にもスペースを求めるのかい。
どこもかしこも工事中の看板を掲げ、
いつもなにやら穴を掘っている。
今度はなんだい?
また新しい電車の路線かい?
もういいだろう。
都営やらメトロやら新線やら、
覚えきれないや。
地下ができれば必然的に地上への出口は増えるけど、
その数があまりに多すぎて
今どこにいるのか、自分を見失いそうになるよ。
田舎者にとっては
Suicaのペンギンさえ怖いんだぜベイビー。
街が怖いわけじゃない。
あまりに作られた世界なのにもかかわらず、
多くの人がそれに順応して
当たり前に暮らしていることが怖いのだ。
ICカードを片手に何食わぬ顔で
路線を乗り継いで行くそこの坊や、
君はかなりすごいことをしているんだよ。
そこでつまんなさそうな顔で吊革を持っている姉ちゃん、
いくらでもモノがある中で
これ以上何が足りないって言うんだい?
この街では当たり前の基準が違う。
新陳代謝が活発だから、
底知れない欲求とともに
その基準はどんどん高まっていく。
一度上がってしまった基準は、
なかなか下げられない。
電気や電波がなくたって、
人間は生きていけるのに。
大阪に住む僕も
昔より基準が上がってしまったかもしれないけど、
もうここらでストップだね。
コンビニエンスな社会は、
やっぱり僕には無理そうだ。
Darling、君と一緒に
田舎者でいこう。