No.2767 観覧車は「恋時計」
「もしも、自分が小人になって、
あの“時計の針”の先に腰掛けたら、
この部屋の景色はどんな風に見えるんだろう?」
たまにそんな
メルヘンチックな想像をすることがある。
時計の針はゆっくりと回るから、
景色も変わっていくんだろうな。
そしてまた、元の場所に帰ってくる。。。
観覧車にキャッチコピーをつけるなら
「恋時計」。
昔、遊園地キャッチのコメントのついでに
そう書いた。
もちろん、家族で乗る人もいるし、
友だちと乗る人もいるだろうけど、
やっぱり多いのは男女のカップルで。
毎日、何人もの男女を乗せて回り続ける観覧車は、
ゆっくりと、二人の時間を刻む時計のように見える。
観覧車は、6時の位置からスタート。
そこから、7時、8時…と
徐々にワゴンが上昇するにつれて
胸のドキドキが高まり、
12時の位置に到達したら
高さもドキドキも頂点へ。
そして、
1時、2時…と下降をはじめると、
今度は終わりが近づいてくる寂しさで
だんだんと気分が沈んできて、
また6時の位置に戻る。
まるで時を刻む時計のように、
ワゴンが回る動きに合わせて
心が刻まれていく。
それが恋時計の醍醐味なんだろうね。
非日常のときめきって、
ずっとその状態だと
いずれは日常になってしまうらしい。
もしも、12時の位置に
観覧車の降り口があったなら、
きっと誰も乗らないだろうな。
6時の位置から乗り、
また6時の位置まで戻されるからこそ、
12時の頂点で見た景色がずっと忘れられなくなる。
どうやっても人間の力では止められないような
大きな歯車の力で、強制的に元に戻されるからこそ、
その前の出来事が非日常として輝いてくるのだ。
“ドキドキ”と“寂しさ”。
2つがあってはじめて恋は輝きを増す。
どちらも胸が痛くなるから、
そこから逃げてしまう人もいるかもしれない。
でも、その痛みを感じられることが
「生きている幸せ」なんだと思う。